第八幕 ページ9
「───んっ」
目を覚ますともう朝のようだった。
襖の隙間から覗く日の光が眩しくて目を細める。
昨日はあのまま眠ってしまったらしい…しかし、リクオにファーストキス奪われるとは思っていなかった。
あの時もっと警戒してたら唇を奪われずに済んだかもしれない。
「あ”ー、クソッ…思い出しただけで腹が立つ…」
前髪をかきあげクシャリと握る。
苛立ったときの俺の癖だ。
「A様、起きていらっしゃいますか?」
「その声は、氷藍か。起きている」
いつものトーンで返し、長い髪を高い位置で黒いリボンで結う。
そして黒いパーカーにジーパン、これが俺の人間に化けた姿。
俺もまだ子供だから背丈は153cm程。
本来の…妖の姿なら167cmはあるんだけどな。
「雪女と毛倡妓から、朝食が出来たとのことです」
「…ここで食べる。すまないが、持ってきてくれないか?」
「はい」
氷藍はそう言うと、俺の分の朝食を取りに行った。
その時、後ろからそっと腕が伸びてきた。
「氷鬼か」
「はい。A様、何故奴良組本家へ行こうとお考えに?」
ギュッと俺を抱き締めながら猫なで声で問う。
それには慣れっこだったから、氷鬼にもたれかかり目を閉じる。
「面倒事が、嫌いなだけだよ」
「そうですか」
少しして氷藍が朝食を持ってきてくれた。
ついでに自分と氷鬼の分も…本当に器用だな、コイツは。
…微かに聞こえる騒ぎ声。
あんな中で朝食など食べれるわけがない…俺は面倒事とか煩いのとか嫌いだ。
嫌いなものが多すぎるな…なんて内心苦笑いを浮かべていると、本当に微かな妖気を感じた。
それは氷鬼も氷藍も同じ様で、箸を置いて障子を睨みつける。
「あっ、起きたんだね。朝食は…ここで食べるの?」
入ってきたのは茶髪の人間、だった。
いや待て…微かに感じるこの妖気、まさかコイツ…。
「お前…人間だったのか…」
「へ?あぁ、昼はね」
そう言って笑うリクオに呆れかえる。
まさか妖怪の総大将となる奴が、クオーターだとは思わなかった。
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小豆 - キュンキュンしながら読ませていただきました!本当に大好きな作品なので、続編がとっても気になります!夜リクオ様のSっ気がある所に惹かれました((´艸`*))これからも更新頑張ってください! (2017年4月14日 18時) (レス) id: 8e0dfb2a1b (このIDを非表示/違反報告)
ウラト - 頑張ってください!夜リクオ君がかっこいい!更新ファイトです! (2016年5月2日 23時) (レス) id: 9d9d1106e6 (このIDを非表示/違反報告)
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