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第七幕 ページ8

風呂から上がり、ぼんやり枝垂れ桜を見つめていた。

「……綺麗、だな…」

そう心から思っていても表情は無表情のままだ。

そんなとき、その桜の木の上にもたれかかっているリクオが居るのを見つけた。

「よぉ、A」

「…なんだ。そこが貴様の特等席か?」

「まぁな」

濡れた髪を乾かしながら上を見上げる。

それより、コイツが俺に惚れたとか有り得ない…。

一度眼科に行って看てもらった方がいいんじゃねえの?なんて言おうと思ったがやめた。

「こっちに来いよ。桜が綺麗だぜ?」

「別に、ここからでもよく見える」

溜め息を吐いたその瞬間、またふわりと地面から足が浮いて気付けば桜の木の上に座るリクオの膝の上にいた。

反応すら出来なかった…。

俺はリクオの膝から降りようとするが後ろから抱き締められて動くことすら出来ない。

「まだ俺を拒絶すんのかー?」

「…俺は、他人が嫌いなんだよ…氷鬼と氷藍以外の奴は…」

「ふぅん。そうか…氷みてぇに冷たい心だな」

そう言いながらリクオは俺の頬に手を滑らせてそっと唇に触れた。

「唇も心と同じように氷みてぇに冷てぇな…」

リクオは俺をまっすぐ見つめる。

何故か俺はその目から目が離せなくなってしまった。

「その唇、俺が暖めてやろうか」

「っ!?」

グッと抱き寄せられ、俺とリクオの唇は重なった。

離れたくとも男の力には勝てやしない…。

「ん、んんっ…ちょ、お…いっ…」

やめさせようと口を開くが、リクオはニヤリと笑うと…その開いた口に舌を滑り込ませてきた。

舌を絡めとられ、触れるだけのキスがどんどん深くなっていく。

なんだよ、これ…体に力が、入らない…。

「ん、んふ…ぁ…」

ダメだ…ペースに呑み込まれたら、本当に…。

俺は力の入らないてで何とか氷刀を手に取り、リクオの真後ろにある木に突き刺した。

「っは…あっぶねぇ」

「このっ…人のファースト奪いやがって……気分が悪い。もう寝る!」

俺はリクオから離れて自分の部屋に戻った。

クソッ…クソクソクソクソッ!!

何で俺がこんな目に…。

「心臓が、煩い…」

黙れよ、俺の心臓…。

どうもアイツと居ると調子が狂う。

俺は口を手の甲で拭った。

少しだけ熱を持った唇は、すぐに氷のような冷たさに戻ったような気がした。

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小豆 - キュンキュンしながら読ませていただきました!本当に大好きな作品なので、続編がとっても気になります!夜リクオ様のSっ気がある所に惹かれました((´艸`*))これからも更新頑張ってください! (2017年4月14日 18時) (レス) id: 8e0dfb2a1b (このIDを非表示/違反報告)
ウラト - 頑張ってください!夜リクオ君がかっこいい!更新ファイトです! (2016年5月2日 23時) (レス) id: 9d9d1106e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:如月 泰斗 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2015年9月22日 22時

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