命令:学院の魔女を１週間以内に見つけて下さい【月永レオ】

裏切り者の、白実。 ページ28

＊


夕暮れのオレンジ色の光が、生徒会室を包み込むように窓から差し込んでくる。


俺の目の前にある、生徒会長だけが座れる椅子には美しく、儚げにすわる会長が俺を見据えていた。


「何の、御用ですか。」


会長が俺を生徒会室に呼び出すだなんて、資料の整理を頼まれるか姫宮の世話を頼まれるかの二択。


けれど俺が生徒会室に入った瞬間、"話があるんだ"なんて会長が言うものだから、俺は冷汗をかく。

…会長から直々に話があるなんて、絶対に怪しい。


心の奥底で会長を恐れている自分がいる。

「真緒、今日君を生徒会室に呼び出したのは"新しい任務"を君に実行してもらいたいからなんだ。」

「新しい…任務？」

顔をあげた時に透き通ったスカイブルーの綺麗な目が、俺を見据えているのを感じると背筋が凍る。


「Aが学院の魔女を探しているらしいんだ。」


最初にその事を聞いた瞬間、俺は驚いた。
そのような噂は1ミリも流れてきていないのに、会長はどこから情報を得たのだろうか。

…流石、皇帝。


「Aの魔女探しに、真緒に加担してほしいと思っているよ。」

ポカン。
という感じだった。

"あの"会長の事だから「魔女探しを邪魔して欲しい」と言われるのかと思っていた。

A先輩の邪魔をするようなことは出来ればしたくない。
A先輩には本当にお世話になったし、1人の人間として尊敬している。


そのA先輩のお手伝いが出来るのならば一石二鳥だ。



俺が完全に安心して、"わかりました"と言おうとしたその瞬間会長が口を開けた。

「Aの魔女探しに協力した後に…裏切ってほしいんだ。」

「うら…ぎる？」


俺が小さく呟いた言葉が生徒会室に響き渡った。




＊＊＊


俺は、本当に単純な男だ。

大丈夫。
安心しろ、俺。

恐らくもうすぐA先輩が俺に事情聴取をしに来ることだろう。

…学院の魔女についての手がかりを、だ。





「真緒！！」


「A、先輩。」


…ああ、俺は今、ちゃんと笑えているのだろうか。

アイドルとして、次期生徒会長として。

大丈夫だ。
作戦通りにいければそれでいい。

会長の手のひらに転がされていると同時に俺はA先輩を手のひらで転がしているような感覚に陥り、気持ちが悪くなる。


ごめんなさい。A先輩。

俺はやっぱり、単純な男みたいです。

今はまだ、俺はA先輩の裏切り者だけれど。









会長を裏切る勇気が、俺にあったらその時は。








…

道化師は魔女を敬す。→←＊第2章 。

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