第百十二話 戻ろう? ページ26
No SIDE
『はぁ…はぁ…』
林の大分奥まで来ると
息を切らして木にもたれ掛かるように座り込んだ
全力で足場の悪い中を走ったせいか呼吸は乱れ、
心臓は飛び出そうなほどに鼓動が激しい
火照った頬の熱を確かめるように
手で触れながら、ガクンとうつむいた
『…やっぱ
…駄目ですよ…ロウさん
私、やっぱりアイツらと変わりません…』
今にも泣きそうな声で膝を抱える顔を埋める
A自身、自分の荒く
手のつけられない感情に
押し潰されそうになっていた
『…もう、みんなで旅…できない…』
今回の止められないほどの
憎悪と怒りがよくないものだと自覚はしていた
しかし
どうしても許せなかった
そして止められなかった
きっとあそこでデントが
割って入らなければ…手を上げていた事だろう
そんな仲間、居ても迷惑なだけだ
Aの中で少しずつ
旅から外れることが頭をよぎった
その時
デント「Aちゃん!!」
『!』
ふと顔を上げると
目の前には息が上がっているデントと
少し離れた木の陰にルカリオがいた
恐らく、ルカリオの波動で
ここまで来たのだろう
『っ…』
デントの顔をしっかり見えず
逃げるように再び膝に顔を埋める
暗い視界の中、デントのものだと思われる
落ち葉や枝を踏む音がゆっくりと近づいてくる
デント「…一緒に戻ろ?」
うずくまるAに優しく問いかけるが
全く動く気配はないし言葉も返ってこない
無理に連れ帰るのはよくないと
判断したデントはそっとAの隣りに座った
Aは逃げることなくうずくまり続け
ルカリオも特に止めもせず
ただジッと見定めるかのように
デントを見つめていた
『…』
デント「大切な人なんだね
Aのお師匠さん」
『…』
デント「サトシから聞いたよ
お師匠さんの事を
悪く言われて怒っちゃったんだよね」
『…』
デント「…ごめんね、
知らずにあんなこと言って…」
『…別に、他の子探せばいいよ…
私なんかより大人しくて可愛い子…』
思わぬ返しにデントは目を丸くした
言葉が返ってきたこともそうだが
まさかAがそんな返しを
してくるとは思っていなかったのだ
デント「僕はAちゃんがいい」
『…好きな私じゃないんでしょ』
うずくまったまま、力のない声が
くぐもって聞こえてくる
その声色はどこか
拗ねた子供のように頼りないものだった
デント「それは…」
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作者名:ラム酒 | 作成日時:2022年9月26日 3時