第百十八話 毒と夢 ページ32
A SIDE
上は一面の青空
そして目の前に広がるのは
視界よりも大きな彩りの美しい緑の葉をつけた木々
ここは…どこだ…？
【ポッドー…コーン…うぅ】
声のする方を見ると
大粒の涙を流してヨタヨタ歩く幼い男の子が見え
すぐにこれが夢であることを悟った
…あぁ…また、昔の夢か
きっとサザナミタウンの時
初めてデントと出会ったときの記憶だ
【…どうしたの？】
【っ…き、きみは？】
【私はA、ガラルのA
…もしかして、君迷子なの？】
【まいごじゃないもん…
みんながまいごなんだもん】
【…】
涙でぐちゃぐちゃなのに
苦しい言い訳をしてきたのに
思わず黙ってしまった小さい私
そうそう…
迷子と思われたくなかったのか
変に強がってたなぁ…アイツ…
【…そっか、なら一緒に探そうか？】
【え…いいの？】
【…どーせ、暇だし…いいよ別に】
私がそう言うと小さなデントは
潤んだ目を輝かせて
今とは違う小さな手で私の手を握った
【ありがとぉ！Aちゃん！】
あれから今になっても変わらないのは
この笑顔と
手を繋ごうとしてくる所かな…
あの頃の記憶で唯一…
忘れたくない記憶だ
…
…
…
…
『…んっ』
口に広がる薬品臭に目を覚ますと目の前には
心配そうに顔を覗き込むデントの顔があった
デント「っ…良かった…！」
私と目が合うと綺麗な瞳をうるませ
抱きついてきた
夢の中と現実のデカさの違いに少し驚いてしまった
…凄いデカくなったな
今となってはとても迷子で泣いていたと思えない
『…お前も随分と成長したな』
デント「な、なんで
急に僕の成長に感心してるの？」
『いや、ちょっと昔の夢を見てね…』
そう言うとデントはイマイチ
ピンときていないのか、不思議そうに私を見る
私は私でキョロキョロ周りを見ると
怪我をしていたフシデもしっかり
アーティーさんに治療をしてもらえたようで
こちらとしても一安心だ
『…フシデの事、
ありがとうございます、アーティーさん』
アーティー「いや、それよりもだ」
『へ？』
アーティー「君の行動は
僕の純情ハートに響いたよぉ！」
そう言いウィンクをされるが
正直どんな顔で何を返したらいいのかわからない
いや、褒めてくれてはいるんだろうけどさ
なんつーか…
感性とか言葉選びがデントに似てるよな
うん、ほんとに
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作者名：ラム酒 | 作成日時：2022年9月26日 3時
