【銀魂】彼女の小指には赤い糸が沢山ある【沖田総悟】

浮気相手が、43人目 ページ43

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彼の囁きにまるで魔法が解けたように
動かなかった身体が動き出した。

───否、誰かに後ろに腕を引かれた。

いきなり後ろから引かれたものだから
私は反応する事が出来ずに
されるままに後ろへと下がった。

高杉様の手が離れ、背中に感じた感触。
嗅ぎなれた匂いと体温。
振り返らなくても誰かわかった。



「よォ、久しぶりじゃねェの。

Aを攫いにでも来たか?
ハッ…お前、そのナリでずっと片思いかよ

見た目に寄らず純粋じゃねェか。

…高杉くんよォ」



彼が銀時だと確信して振り向くと
言葉に対して表情は真面目なものだった。
銀時の後ろには神楽ちゃんと新八くんも居る。

お仕事が早く終わったのだろうか。

高杉様に視線を戻すと彼は
ベランダ部分に寄りかかりながら俯いていた。
その口元が不気味に弧を描いている。



「ククッ…テメェこそ一目惚れか銀時。
あん時から餓鬼をずっと自分の近くに
置いてるなんて相当じゃねぇか、なァ?

テメェもテメェだ。…"上"は楽しかったか?

だが少しばかり遊びすぎたみてぇだな。
銀時もどうせ知ってるんだろう?
…それどころかあるいは今日も
"ソレ関係の仕事"だったんじゃねぇのか」


「ストーカーかよ、キメェな」


「ストーカーは俺じゃねぇなァ…。
…知ってるか、兎は目が良いらしい」


「は?」



彼は、俯いたままに傘の下で
更に包帯に隠れた方の瞳を指差しながら
不気味にまるで自慢でもするように言う。



「正確には視野が広い。」



そして、ゆっくり手を下ろすと
彼はその手を刀に掛けた。
銀時も木刀に手を掛けて
その左右で新八くん達も戦闘態勢に入る。

その間に挟まれる私は
どうしたらいいのだろう。

ここで、刀を交わらせるつもりだろうか。



「知ってるだろうが
俺ァ、片目が使えねぇモンでな

視野が広いと言えば鷹だが
鷹よりも兎の方が視野が広い。
そんな兎を俺の片目替わりに飼ってる訳だが

さて、その兎はどこから来るか分かるか?」



そう言って彼は、刀を抜いて銀時に近付いた
片手で刀を扱いもう片手は…私の腕を引いた。
同時に向いた刀に意識をそっちに向けた銀時は

私から離れてしまった手に「しまっ…」
と言い彼は手を伸ばす。私も伸ばすが届かない

このまま床に尻もちをつくだろうと思った。

が、真実は少しばかり違った。



「兎とかしらねーよ!
会いたきゃ動物園にでも行け!!」


「ククッ…兎は、月から降りてくるのさ」



三対一で戦いながら、彼は指を上に向けた。

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