【銀魂】彼女の小指には赤い糸が沢山ある【沖田総悟】

浮気相手が、42人目 ページ42

.



梅雨はもう過ぎたはずなのに
未だ雨の降り注ぐ日はあり
その日も雨の降り注ぐ日だった。

昼食を食べながら聞こえる雨の音は好きだった



「ごちそうさまでした。」



室内に、私一人の声が響く。

今日は万事屋にて私一人だった。
銀時達は何か仕事があるらしく
雨にも関わらず出ていってしまった。

私は彼らが帰るまでに
夕飯を作ったり家の事をするように任された。



「…とは言っても」



昼食に使った食器を洗いつつ冷蔵庫を見る。
中には殆ど何も入っていない。
…この雨で流石に買い物は行きたくない。

けど、行かなければ夕飯は作れない。

仕方ない。

私は洗い物を済ませると
着物の上から一枚羽織って
傘を持つと家を出た。

外は寒さと共にジメジメしている。

鍵を閉めて、階段を降りると
万事屋前の前のいつも人の賑わう通りにも
今日はほとんど人も歩いていない。

そんな通りを歩き出すと人が歩いてないだけで
まるでいつもとは違う街にすら見えてくる。

ふと、私は途中で思い出して足を止めた。



「…しまった」



懐や袖口を探してみるけれど
そこにお財布は無かった。
買い物に来たのにお財布を忘れてしまっては
何も買うことが出来ないので私は一度歩いた道を引き返す。
やはり先程と同じで人は居ない。

あまり距離は離れてなかったので
万事屋まではすぐにたどり着いた。
鍵を出しながら階段を登る。

階段を登りきると同時に
鍵を出し、扉に視線を向ける。


そこには先程までは居なかった人物が居た。


それは、銀時でも神楽ちゃんでも新八くんでも
ましてや真選組の人達でも無い。

彼はまるで突然現れたように
万事屋の扉の前に寄り掛かり
笠から覗く口元に妖艶な笑みを貼り付けていた



「…高杉様」


「…フッ、…その呼び方は"客"への呼び方だ。
俺ぁ、もうとっくに"客"じゃねーよ」



彼の名前を呼ぶと彼は体ごと私の方を向き
笠から翡翠色の瞳を私に向けた。
雨が振り雲が厚い薄暗い天気の中
笠で影になった彼の瞳は暗闇で光る
猫の目のようだった。

けれどその眼は猫なんて甘いものじゃない。

蛇に睨まれるようにその視線は光る。


まるで捕えられたように
石にでもされたように私の体は動かない。


彼が一歩、一歩近付く。
彼の事は分かっているはずなのに
逃げなければ、声を出さなければと

本能的に思った。…思ってるのに、動けない。


彼は私の肩に手を置くと耳元で囁いた。



「あん時の餓鬼が随分成長してんじゃねぇか」

浮気相手が、43人目→←浮気相手が、41人目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す