検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:72,356 hit

失って初めて気付くものは、いつだってかけがえのないもの ページ42

〜竜胆side〜


地上について船から降りても、晋助は姿を現さなかった。


そのまま、それっきり、昔の頃とは別人のような晋助の、この世を蔑むような冷めた瞳を見ることは無かった。




まるで別世界のような変わり果てた日本の土を踏みながら、焼失したという帰るべき場所(松下村塾)に、私はすぐさま向かった。

建て替えられたものの、既に廃屋と化していた建物を目の当たりにして、再び負の感情が湧き出した。


廃屋の前で泣き崩れる女は、傍から見たら変人だったに違いない。


失った幸せ、失った愛、失った居場所、全てを実感した瞬間、あの日強く決意した復讐心を蘇らせた。


それからの一年、私は許されない罪を犯した天人に報復し、元松下村塾の廃屋の玄関に花を手向ける日々を過ごした。


けれど、いくら天人を成敗したところで、心が満たされるわけでもなければ、大好きな松陽先生が帰ってくるわけでもなかった。







それでも、最大の生き甲斐を奪った奴らを私は決して許せなかった。



そしてそれは銀時も然りで、いつか見つけ出して必ず私が息の根を止めてやる、と決めてきた。



予想はしていたが、霄の研究員の差し金であろう夜兎族の連中が私を再びあの地獄に引き戻しに現れた。


私は必死で逃げた。





必死で逃げた先に、懐かしい銀髪が目に入った。




銀時だった。




前に一度見た映像からまた随分年が経って(10年と言っていたか)、もう立派な成人男性に成り果てていた。





でもその時は、夜兎族の男達に追われていた事もあって、上手く頭が回らなくて身を隠すことだけを考えていた。








そのあと、ようやく正面から向き合って再会した。



そして、銀時も昔の私を知らない人間になってしまっていたことを悟った。





殺意を抱きながらも、やはり懐かしい面影のせいで、どうにも拳に力が入らなかった。


それに、銀時に再び出会った時、彼の中に私の大好きな松陽先生が見えた気がした。



幼い頃、銀時がずっと先生の傍にいたせいで、あの頃のように今も先生が隣にいるような気がして、心苦しかった。




話す内に、銀時の知り合いが狐の虐殺鬼と呼ばれる私の代わりに処刑される事を知った。




銀時には意地を張っていたが、内心は狼狽えていた。



彼女の無罪を晴らすのはとてもリスクが大きかった。


考えた挙句、私は最後にまだ片していない重罪の天人達を裁き、その後自首しようとしていた。






が、銀時を目にした瞬間、その考えは霧散した。

人間の醜悪は地獄をも生み出す→←里帰りは定期的に(訂正しました)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (108 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
247人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。