地獄から生還してもそこは天国ではない ページ39
〜竜胆side〜
「晋助殿、いくら覚えのない人だからと言って、女性を泣かせてはいけませんよ。」
そう言って私に手ぬぐいを差し出したのは、丁髷と武士らしい風貌が特徴的な男の人だった。
「武市先輩こそ女だからって簡単に気を許しちゃダメっスよ！！どこぞの正体も知れない奴なんスよ！？」
金髪の女の人が私に指を指しながら息巻いた。
「彼女がどこの誰であれ、私は泣いている女性を放っておくことはできません。フェミニストですから。」
「せ、先輩....いつもは変態のくせに」
「一言余計ですよ。」
大丈夫ですか、と言葉を繋いで武市先輩と呼ばれる彼は優しく私の背を撫でてくれた。
もらった手ぬぐいで涙を拭いながら、醜態を晒した恥ずかしさが徐々に込み上げた私は、顔を伏せた。
すると、暫く黙っていた晋助が再び口を開いた。
「そろそろ聞かせてくれねェか。何で俺達の買い込んだ物資の中にガキが紛れ込んでんだ。」
さっきより鋭い目付きで睨まれ、思わず唾を飲んだ。
「私、逃げてきたの。」
「「「逃げてきた？」」」
その場の全員が声を揃えて復唱した。
そのまま話を続ける。
「人身売買で私を買った天人に今まで奴 隷としてこき使われていて、決死の覚悟で逃げ出してきたの。
この箱に入ったのは、貨物船に乗り込んで天人の宇宙船から脱出するため。それで、気付いたらここにたどり着いたみたいで、」
言い終わらせると、三人のうち最後の一人である三味線を持った男の人が口を開いた。
「はぁ、つまり、ここには何か目的があって来たのではなく、偶然だという事でござるか？」
「そう、そういう事なの。」
同調して頷くと、三人は気を緩めるように肩を落とすなりため息をつくなりした。
「ま、確かに、見る限り針一つ持ってない丸腰っスもんね。」
言われて、自分の服はまだあの時の実験用の服であることに気付いた。
相変わらず真っ白い囚人服のようだ。
この白をどれだけ赤く染めたことか....
惨憺たる記憶が蘇り、吐き気に耐えられずその場にしゃがみ込んだ。
二人に心配される中、私と同様にしゃがみ込んだ晋助が声をかけてきた。
「地獄から這い上がって来るたァ見上げた根性だな。だが、今の説明じゃテメェが俺の名前を知ってる理由にはなってねェ。」
ギクッと肩が跳ね、それは...と言葉を繋げて目を泳がせた。
(とにかく自然な言い訳を....)
そうして私はその場しのぎの嘘を晋助に返した。
初恋なんて大抵傍から眺めてるだけ→←君にとっては一瞬でも、僕にとっては永遠に思えた瞬間だったんだ
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紅狼 - とても良い作品でした！！続きがめちゃ気になります！！更新頑張ってください！応援してます！！！！！！ (1月8日 1時) (
レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです！！続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした！！！続き楽しみにしています！ (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです！ (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです！！ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のと丸 | 作成日時：2019年10月1日 3時
