君にとっては一瞬でも、僕にとっては永遠に思えた瞬間だったんだ ページ38
〜竜胆side〜
最初に言葉を発したのは、金髪が印象的な女の人だった。
「し、晋助様、この女と知り合いなんスか?」
そんな女の人の言葉をよそに、私は久しぶりの再会に感激して、木箱から立ち上がり顔を晴れ上がらせた。
「わ、私の事覚えてる....?!竜胆だよ!!」
嬉々とした声は沈黙の中、空振りのように響いた。
晋助は少し眉間に皺を寄せて、一言呟いた。
「誰だ、テメェ。」
「ぁ........」
その時私の脳裏に研究員の顔が浮かび、その男が口にした言葉を思い出した。
『吉田松陽とその弟子の子供達の記憶から、お前を抹消する』
(うそ、まさか本当に.........消したと言うの........)
驚愕の事実に言葉を失うと、つう、と一筋の涙が頬を伝った。
この反応に困惑した周りの三人が、晋助に何とか思い出すよう促し始めた。
「だから、言ってんだろうが。こんな女記憶にねェよ。」
「で、でもじゃあ何でこの女は晋助様の名前を知ってるんスか!.....やっぱり、鬼兵隊のスパイっスかね。知り合いを装って潜り込む女スパイ!!!絶対そうっスよ!!」
勝手に決めつけて納得すると、女は両手に拳銃を構えて銃口を私に向けた。
「まぁ待て、」
そう言って晋助は私の方へ歩み寄り、思い出そうとしているのか顎に手を置き、じっと見据えた。
ドクンドクンと心臓が深く鼓動を打つ。
「いや、やっぱりねェな。おいテメェ、何でこんな所に入ってやがった。」
願わない方の結論を出した晋助に、私はまだ信じられずに訊ねる。
「ほ、本当に....覚えてないの.......?」
「しつけーな、そう言ってんだろ。」
「.........そう、」
諦めた途端肩の力が落ち、同時に涙がとめどなく溢れ出た。
(本当に私の事忘れたんだ.....
ああ、違うか、忘れたんじゃなくて、
消されたんだもんね......
先生と銀ちゃん達で隣町まで散歩に行ったあの日、
銀ちゃんにとばっちりを食らって、一緒に廊下に立たされたあの日、
あの日も、あの日も、あの日も、
どの思い出の中にも、
もうそこに私はいないのね....
私は最初からいなかったことになったのね.....)
今更になって私は、記憶を抹消されたという事の重大さに気付き、とめどなく涙が溢れ出た。
その時晋助は、心做しか、泣き虫だった幼い私にどう接すればいいか困ってる、昔の晋助の表情をしているように見えた。
地獄から生還してもそこは天国ではない→←波瀾万丈という言葉では足りないほどの激動
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紅狼 - とても良い作品でした!!続きがめちゃ気になります!!更新頑張ってください!応援してます!!!!!! (1月8日 1時) (レス) @page50 id: c1d0e4500e (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - ストーリーがすごく好きです!!続きが楽しみです。 (2023年3月30日 21時) (レス) id: 17169564a0 (このIDを非表示/違反報告)
らいあ - 言葉が出ないくらいすごい作品でした!!!続き楽しみにしています! (2022年1月14日 17時) (レス) id: 5ed45ad072 (このIDを非表示/違反報告)
常夏(プロフ) - この作品大好きです! (2021年2月5日 22時) (レス) id: 3853130063 (このIDを非表示/違反報告)
みっかぼーず(プロフ) - すごく面白かったです!!ストーリーが良く作り込まれていて尊敬します (2020年4月19日 0時) (レス) id: 90b29dc37c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のと丸 | 作成日時:2019年10月1日 3時