異世界人と万事屋３【銀魂】

あの晩何があったのかという話 【前編】 ページ14

〜神威side〜




カツン、カツンと狭隘な廊下に俺の足音が鈍く響く。


暗闇の中を等間隔に掲げられた松明だけが照らす。



ふと足を止め、左の鉄格子の向こうに目をやる。


すると冥闇の奥から三つの声が揃って飛んできた。

「「「団長！」」」


「どう？牢獄生活は。」


笑顔をつくると三人の虎柄の天人が物音を立てずに歩み寄ってきた。



「どうもこうも最悪に決まってるじゃないですか！」




この三人はテレビで報道する事を目的とし、人身売買罪としてわざと警察に捕まらせた囮だ。



極刑にまで及ぶのは予想外だったけど、おかげでだいぶ長くニュースに取り上げられた。



これで女の目にも止まっただろう。




そして今夜はコイツらの死刑執行日前の最後の夜。



女は警察に殺される前に自分の手で殺しに来る、と踏んだけど、



果たしてちゃんと罠にかかったかな？




「団長、明日俺達が首チョンパされちまう前に助けに来て下さいよ！約束ですから！」


焦燥してるのか、落ち着きのない声で乞う一人。


「もちろん。」


ここでそんなつもりはない、なんて言ってコイツらが騒ぎ出したら計画が水の泡になる。


表面的な笑みだけ貼り付けて答えると、僅かに安堵したような顔を見せた。


(ま、本当はどうだっていいけど。)


心の中で呟くも、頭の中は女が来るかどうかしか考えてなかった。



すると新しい靴音が左奥の角から近付いてくるのが分かり、俺は直ちにその場を去った。



(二人の靴音...看守かな？)



生憎俺の予想が当たり、二人の男が姿を現した。



ガチャガチャと施錠を確認する音が響き渡る。



すると突然、足音も鉄格子を揺らす音も消えた静寂な瞬間が生まれた。





不思議に思って廊下を覗くと、男の苦しむ声が漏れただけの静けさの中で、ソイツは囮の天人の檻の鍵を開けた。


一発喰らって気絶したのだろう、一人の看守が地面に横たわっている。


もう一人の看守は化けの皮を剥いだように、人間の女の典型的な体つきに変わっていた。


狐のお面がちらりと見える。




現れた。




彼女をからかう天人達の余裕そうな声が廊下でこだまする。


女は一言も返さないまま錆び付いた重い檻を瞬時に開き、同時に甲高い音が静寂を鋭く割いた。



ただの人間の女が出来る所業じゃない。






こんな事を容易に出来そうな女の顔がふと頭をよぎった。



(夜兎の力を人工的に...ね。)






すると突如血飛沫の音が聞こえ、さっきまでの声が止んだ。

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