形式的な大人 ページ2
夕暮れ時、目的もなく歩くこと1時間。
さっさと自宅に戻れと言われればその通りなのだが、何故だか今は『暇』と認識するのが嫌で仕方ない。
「んなツラして歩いてっと職質されやすぜ」
「・・・現在無職ですが何か」
「実質無職の旦那とお似合いじゃねェですか」
「最近は忙しいみたいだけどね」
制服のまま甘味処で団子を食べるその姿。もはや警察とは思えない。
わざわざ私に声をかけてくるとは、同じく時間を持て余しているのか──まぁ沖田さんの場合はサボりだろうけど。
「・・・変なものでも食いやした?」
普段なら全力で顔を歪めて足早に立ち去っているところ。しかし人には気紛れという瞬間があるもので。
空いていた沖田さんの隣に腰掛け、喋りを続ける姿勢を見せた。
おかげで真横から奇妙なものを見るような視線が向けられて、失礼な発言をサラリと繰り出すところはやはり沖田総悟だ。
「変なものどころか昼から何も食べてない」
「旦那に放っておかれて傷心ってとこですか」
「は?」
冗談、茶化し。そんな口調ではない。
まるで全部の事情を知っているみたいに淡々と紡がれた言葉。
思わず聞き返した私に、沖田さんは続けて言った。
「数時間前の見廻りで万事屋と会ったんで。随分と急いでたようですぐ別れやしたけど。おかげで珍しく旦那と土方さんも何事もなく。」
「・・・そりゃ良かった。仕事はしてるけど揉め事は起こしてない。ベストじゃない。」
「アンタにとっちゃベストじゃねェみてェですが」
「今までが時間がありすぎただけだし。普通は働いてる者同士、こんなもんでしょ。」
本心じゃないくせに。
表面的な言い訳ばかりが上手くなって、我ながら形式的な大人になってしまったなと思う。
普通、なんて。
そんな言葉で片付けられる人生を望むなら、端から銀時に惚れてはいない。
「・・・っていうか沖田さんも戻らなくて良いの?また十四郎に怒られるよ。」
「土方さんにアンタが交渉してくれても良いんですぜ」
「沖田さんのサボりに手を貸す理由はない」
私の返答に1つ舌打ちをすると、残り1つだった団子を口に入れながら立ち上がった。
「団子でチャージしたでしょ。ま、頑張って。」
「Aさんが俺を鼓舞するとは。こりゃ本気で心配でさァ。」
「沖田さんが警察をやってる事実以上に心配なことはないから」
そんな口撃を笑ってかわす辺り、ほんのちょっとだけ似ている気がして。会話に出たばかりの銀色が脳裏をよぎった。
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ξεグリムэЭ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» ありがとうございます!ログイン情報を忘れて長らく更新できなかったアホなのですが(笑)引き続き頑張ります! (2020年9月2日 2時) (レス) id: 69bdc7b84c (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - しっかり掴まれていて、リアル銀魂!って感じが凄いなと思いました笑ええぇ…未だに驚かされています笑銀さんの生き様だとか、そういうものも盛り込まれていて一気に引き込まれました。この作品大好きです!!応援しています!! (2020年6月18日 16時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - 昨日の夜この作品を見つけ、次の日が学校という事も構わず一気読みしてしまいました笑めっっちゃ面白い!!こんな事があったら、きっとキャラはこういう事を言うんだろうな、するんだろうなという部分を→ (2020年6月18日 15時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ξεグリムэЗ | 作成日時:2019年3月22日 6時