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第五十八幕 ページ12

「お姉ちゃん!!?」

カナが駆け寄り、腕の傷口を見る。

「あーあ、せっかくの新品だったのに…。」

彼女は怪我のことよりも私服を気にしている。
ゆらは彼女の異常な精神力に放心状態になっていた。


(何なんや。
妖怪を相手にちっとも後れを取られてへん…)


陰陽師のような才を持っているわけではない。
ただの非力な人間が妖怪という恐怖に打ち勝つことなんて無いに等しいのだ。
それは、力の問題だけでなく心の話でもある。

少なくともゆらはそう思っていた。

しかし、目の前の少女は害を受けてなおも平然としている。
それは、恐怖に立ち向かう小さな勇者に見えるが、簡単に自分の命を切り捨てられるような無謀なやり方にもみえた。

…はっきり言って普通じゃない。


旧鼠は銀色の高級腕時計の針を覗く。

「さて…そろそろ時間だな。
まあ、来ないならこないでオレは構わんがな…。」

旧鼠は檻の中の三人に目をつけ、舌舐めずりをする。

「知ってるかあ?
人間の血はなぁ夜明け前の血がドロっとしてうめぇのよ……ちょうど今くらいのなあ?」

手下が檻の開けて中に入ってきた。

「ねぇ、旧鼠…じゃ怒るんだっけ?
星矢さん、私とゲームをしよう。」

突然持ちかけられた遊びに旧鼠は顔を顰める。
手下たちも次の言葉を待つように足を止めていた。

「このまま食べられて死ぬのは嫌なの。
どうせならお互いに楽しめて、文句無しの最期を迎えたい。

だから、私は提案する。
そうね…ゲーム内容は麻雀とかどうかな?
一番街らしくていいじゃない?」


「麻雀か、その歳でもう遊びを知っているのか。
やっぱあんたはイケナイ子供だ。」


「ふふ、悪い大人もそれなりに見てきたからね。」


二人のやり取りに不安の眼差しを向けるカナとゆら。
この期に及んで何を考えているのか。
しかし、その提案は予想もできない衝撃的なものだった。

「勝負は三回戦。
もし、私が勝ったら二人(・・)を解放してほしい。
そしてあなたが勝ったら約束通り大人しくする。

…ただし、三回戦後もゲームを続けて一回戦が終わる度に私から少しずつ身体の一部を喰っていくこと(・・・・・・・・・・・・・・・・・)
私が弱り切って命を賭した後は、焼くなり煮るなり好きにすればいい。」

檻の中にいた二人は目を開いて、その恐ろしい言葉に肩を震わせた。


…彼女の提案は彼女の死への一本道なのだから。

旧鼠は大声で笑い声を上げた。

第五十九幕→←第五十七幕 旧鼠の牙と対峙する



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桃子(プロフ) - めっちゃ面白くて好きです!!忙しいと思いますが更新頑張ってください! (2021年5月15日 22時) (レス) id: f758fcdb57 (このIDを非表示/違反報告)
氷麗 - とっても面白いです!色々忙がしいと思いますが、更新頑張って下さい!p(^-^)q (2020年8月6日 10時) (レス) id: 0b4aa008b9 (このIDを非表示/違反報告)
レモンティー(プロフ) - みいらさん» コメントありがとうございます!とても励みになります( ;∀;)ノロマ更新ですが気長にお待ちいただければ幸いです。今日の夜に更新しますね! (2020年6月23日 12時) (レス) id: a8c312a3ba (このIDを非表示/違反報告)
みいら(プロフ) - とっっても面白いです!更新頑張って下さい!! (2020年6月23日 10時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月28日 19時

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