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第八幕 ページ10

日付が変わり、放課後。
Aは全力疾走で学校の中を駆け回る。

通りすがりに校長の怒鳴り声が聞こえたが、そんなものに構っている余裕はないのだ。

彼女がここまで急いでいる理由。
それはバスの発射時刻が迫っていたからだ。

家から学校までは、片道一時間かかってしまう。
それに、リクオとカナが待っている。
万が一遅れた時には先に行くよう伝えてあるが、ギリギリまで粘ることにした。

昇降口に到着し、乱雑に置いた靴を履いて校門に向かう。



………バスは既に出発してしまっていた。

「ああ!くそっ!」

どうしても二人に会って話したいことがあったのにと悔しさのあまり拳を握り締める。

彼女は内心の不安と焦りを隠せずにいた。
何故なら…。



______明日、彼女はこの街から去ることになるからだ。


せめて、大切な人達に一言言っててお別れをしたい。

でも間に合わなかった。
今から家に行くという方法もあるが、こればかりは徒歩で行くのはきつい。

ソラを呼ぼうと手を構えるとき、バス停でぽつんと立っている少年がいる。
その後ろ姿を見て、彼女の顔が綻んだ。


「おーい!リクオ!」

一気に距離を縮め、リクオの顔を覗きこむ。
Aは嬉しさのあまり、いつもと様子が違うリクオの変化に気づかず一人で饒舌をふるう。

「今日もさ、リクオんちに行ってもいい?
どうしても話さなきゃいけないことがあって屋敷のみんなやおじいちゃんにも挨拶したいな。
あと、欲を言えば若菜さんの手料理を最後に…「姉ちゃん、もう来ないで」…え」

「姉ちゃん、もう家に来ないで」

そうはっきり告げた、リクオの低い声が耳に響く。
それは確かな憎悪の感情を含めていた。
彼の言葉がどうしても信じられず、恐る恐る肩を掴む。

「ねぇ。どういうことなの。」

「嘘だって言ってよ。」

「もしかして、昨日のこと?
リクオは妖怪が嫌いになったの?!」

ぽつり、ぽつりと吐いた問いに焦燥感を奔らせる。
だが、最後の言葉が引き金になったのかリクオは肩に置いたAの手を払いのけた。

「いつも妖怪妖怪ってそればっかり…
あいつらは裏でコソコソ悪いことばっかりしてて、人間を襲うんだ。全然英雄(ヒーロー)でもなんでもない。…可笑しいのは姉ちゃんの方なんだよ」

これ以上人間(みんな)に嫌われたくない。
姉ちゃんも人間として考え直した方がいいと説得する。
Aも負けじとリクオの腕を掴んだ。

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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