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第五幕 ページ7

と、言いつつ。
ここで終わらないのが『飛田A』である。

伊達に悪餓鬼と称されているわけではない。
襖越しに耳を立てて、会議の内容を盗み聞こうとしているのだ。
大人しく座って待つなど、性分に合わない。

(さてさて、どんな話なのかな…)

しかし、お偉いさんの会議で人間が盗み聞きをしようなどとバレたら間違いなく吊し上げられる。
さすがの悪餓鬼も慎重になっていた。


かつて、彼女は妖怪同士の会議でとんでもない事をしてしまった過去がある。
そう、既に前科持ちなのだ。

その話をするのはまだ先のこと。

………そして、その二度目はない。


「…あ、静かになった。」

いよいよ始まる。
身を引き締め、聴覚に神経を研ぎ澄ませると…



後ろから冷気が漂う。
Aはブルッと震え、ゆっくりとその正体に振り返る。

こんなに冷たく、心の臓まで凍るような怒りを顕にする人物は一人しかいない。

「…………。」

「つ、つらら…。」

笑顔なのに目が笑っていない。
逃げようとダッシュを決め込むも、あっさりと首根っこを掴まれた。
そのまま、会議を行う部屋から少し離れた場所まで引きずりこまれる。

これ以上先は通さないと言わんばかりに、仁王立ちで道を塞いだ。
Aは反省して、正座で座る。

「私に何かいうことは?」

「ごめんなさい!!」

雪女…もとい氷麗は最大なため息をついた。

「若もあなたも、元気が良すぎて困っちゃうわ。
いいですか?またこんな事をしたら氷漬けにしますよ?」

「それもう凍死ですやーん」

まだこの歳でご臨終はしたくない。
そう思い、会議のことは諦めたようだ。
正座から立ち上がると、氷麗は再び目を光らせたのでAは誤解させぬよう説明をする。

「若菜さんへの挨拶がまだだったから、台所に行ってくるだけだよ」

言葉を残してその場を去ろうとすると氷麗に肩を掴まれた。

「待ちなさい。またそのボサボサの髪で若菜様に会いに行こうとするの?」

近くにあった棚の引き戸から櫛をとりだす。
それを見たAは年相応の無垢な笑顔で満ち溢れる。
また、氷麗にお髪を整えてもらえる。
彼女はこの時間が大好きなのだ。

「女は髪が命!
身嗜みは常にきっちりしないと。
さあ、こちらにいらっしゃい。」

「わーい!!」

第六幕→←作者の話 【空白の題名】



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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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