『___________________』【ぬら孫】 (ページ50)

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第四十七幕ページ50

屋敷の中ではお祭り騒ぎ。
Aはその場所から少し離れた枝垂れ桜の木の下に止まっていた。

そして、何処からか借りたシャベルで土を掘り出す。
その隣には質素な赤色の箱が置かれていた。

「姉ちゃん？
こんなところで何やってるの？」

声をかけたのはリクオだった。

「ああリクオ！
噴火は収まった？」

「何その例え…。」

「私はこれを『リクオ山の大噴火』と名付けることにした。」

「全然嬉しくない。」

リクオは地面に置かれた赤い箱が気になり、拾って中身を開く。
その中には……

ゆらによって滅された日本人形だった。

しかし、人形と呼ぶにはあまりに無惨な姿でありほぼ肉片になっていた。
着物や身体の一部の汚れは拭き取られ、少し綺麗になっている。
下には白い和紙が敷かれていた。

「………姉ちゃん。」

彼女の行動の意図がわかり、顔をあげるリクオ。

目が合うと箱を頂戴と掌を広げるので、そのまま手渡す。

一回り大きく、深さ十五寸(約45㎝)ほどの土を掘った穴に、その箱を入れた。

「実は清継に頼んで貰ったんだよね。
人形の供養とかよくわからんから、オリジナルでやっちゃったけど…
桜の木の下で眠れるんだから、多少間違えていても許してほしいね。」

しっかり埋めて、墓前に土塗れの手を合わせ拝む。

実際は中身が空っぽのただの人形。
このような儀式をしても意味はないのかもしれない。

しかし、彼女は妖への慈悲を忘れなかった。

それが善であろうと悪であろうと、この世に産まれた尊い命がまた一つ消えてしまったことに変わりはないのだ。

リクオは、そんな彼女の姿に釘付けになっていた。

自分にとって妖怪は良いイメージではない。

けれど、姉が彼らに向ける愛情・畏敬・憧憬といった思慕の念は眩く、美しいものに感じた。

その横顔を、近くでずっと見ていたい。
この温かい気持ちをずっと感じていたい。

そう思うと、彼女の人肌が恋しくなって華奢な背中にそっと寄りかかった。

それに気づいたAはフッと微笑む。

「リクオは意外と甘えたさんだよね。
もしかして子供返り？」

「馬鹿にしないで。」

「私としては嬉しいけど、このままいくとお姉ちゃん離れができなくなるよ？」

「…別にいいじゃんか。」

いいんだ、このままで。

それ以上でもそれ以下でもない、この関係がいい。
リクオにとっての彼女はこれからも大切な姉で、守るべき人。

もし、彼女から巣立ちをする日が来るならば。

それは、きっと…。