『___________________』【ぬら孫】 (ページ42)

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第三十九幕　ページ42

「これは一体…？」

「見たまんまだ。
待てが出来ない子犬に首輪かけてんだよ。」

私は犬か。
でも、悪い気はしなかったので大人しく静かに過ごす。
何より、肌寒い夜ではこの温もりがあったかかった…。

「もしかして揶揄ってる？」

「分かるか？」

「この私がイジられる日が来るとは、お主やりおるのう。」

「ジジイかよ。」

嬉しかった。
会えなかった分言葉を交わすことが出来ることを…。
朝になれば今夜のことは忘れるかもしれない。

けど、どんなに変わろうとも君は私の大切な弟だ。
血の繋がりがあるわけでもないのに、こんなに愛おしいと思えるのは何故なのだろう。

私が物思いに耽ていると、横から軽い咳払いがした。

「えっと…拙者がいることもお忘れなきよう。
それとリクオ様その、まさかとは思いますが…。」

怪訝な表情で私達を凝視する烏天狗に、思わず悪戯の心が芽生える。

「あらら～そんな気が早いよ烏天狗。
せめてリクオが結婚できる歳になるまで、私は待ってるから♡」

「あんたが言うとホンット冗談に聞こえない！！
リクオ様、妻に迎える女は慎重に選ぶべきですよ！
どうか正気にお戻り下さい！」

「本気にするなって。
カラス、お前遊ばれてるぞ？」

烏天狗は人が言ったことをすぐ真に受けるから揶揄いがいがある。
次はどんな法螺をふいてやろうと考えていると、このやり取りにふと既視感を覚える。

「どうした。」

「いやね、鴆と結婚式をあげたことがあってさ。」

「鴆様と！？」

____今から六年前。
鴆と初めて会ってしばらく経った日。

その時はリクオが不在だったため、Aの遊び相手は鴆のみだった。

Aはおままごとをしたことがなかった。
そのため、近くにいた鴆を強制的に連れ一度やってみることを決心したのだ。

「今から私達は結婚します。」

「何言ってんだ、頭大丈夫か？」

「遊びに決まってるでしょ。
私が妻役・鴆が夫役でこれをやろう！」

草叢の上で用意されていた台が一つ。
机上には古い急須と小中大の小皿が三段重なっていた。
これは三々九度という神前式の結婚式で行われる儀式で、夫婦が盃を交わすことで契りを結ぶと言われている。

鴆は乗り気ではなかったが、さっさと終わらせようと付き合うことにした。

早速再現しようと、水を代用に盃を飲む。
今度は鴆の番…そんな時だった。

水を入れた盃の上に自分の羽根が落ちたのだ。