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第四幕 ページ5

時は経ち、日が西へと沈もうとしていた。
辺りの街は茜色の景色へと染まり、烏がカァカァと鳴いている。

我が家に帰るかのように、奴良家へ足を運ぶAだったが少し気がかりなことがある。

リクオに元気がない。

学校で落ち込むようなことがあったのだろうか、すっかり意気消沈していた。
Aは放課後になったら伝えたいことがあった。


____あの件(・・・)について話さなければ。


しかし、今のリクオには話せない。
言いたい言葉を飲み込んで、彼の話を聞くことにした。

「リクオ、どうしたの?
悩みがあるなら私に話してごらん?」

それまで閉口していた彼の口が重く開く。

「ごめん、姉ちゃん…。
ボク、秘密を守れなかった。
みんなの前で妖怪のことを話しちゃったんだ。」

それは自由研究の発表会での出来事。
妖怪について研究の発表をしていたクラスメイトに反論してしまったという。

一般人に妖は見えない、存在しない者として認知されている。

リクオの発言は傍からみれば迷言あるいは妄想癖の強い頭の可笑しい人だ。

誰も信じてはくれない。
それが、当然の理なのだから。

むしろ、リクオやAのような人物が特殊な環境にいる。
Aはそれをよく理解していた。

だから、初めて出会ったときも彼とは早く打ち解けることができたのだ。
彼が同じ鉄を踏まないように、二人の秘密として妖怪の話は隠していた。

それを破ってしまった己と女子たちからのバッシング、憧れである妖怪を否定されたことによる悲しみが重なり傷心していたようだ。

門を通り抜けると、Aは縁側に腰を下ろす。
リクオもおいでと示すために、横の席を軽く叩く。

「そっか…そんなことがあったんだね。」

「…姉ちゃんはさ、妖怪のことが好き?」

尋ねた彼の目には、迷いのような色があった。
Aは柔らかい表情で返事をする。

「好きだよ。奴良組のみんなはもっと大好き!
リクオは?」

「ボ、ボクは…」

すると、廊下の左の曲がり角から首無しが現れた。
二人は一切に振り向くと、首無しもこちらに気づく。

「おや、リクオ様とAじゃないですか。
リクオ様、総大将がお呼びですよ。
今日は親分衆の寄合いがありますからね。」

「おじいちゃんが?」

大事な集会で何の用なのだろう、そう思いながらお互いに顔を見合わせる。

「私のことは大丈夫!
ここで待ってるから早く行きな」

とにかく、彼らを待たせてはならない。
Aはリクオの背中を押し、前に進んだ。

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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