『___________________』【ぬら孫】 (ページ39)

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第三十六幕ページ39

「おお…高い」

後席に掛かった日よけの暖簾を払い、流れる夜景を堪能する。

ソラに乗っている時の開放感と似ており、とても気持ちよかった。
リクオは何も考えずに下を眺める私の袖を掴む。

「ちょっと姉ちゃん、危ないからジッとしてなさい。」

まるでお母さんのような叱り方で、私を定位置に座らせた。
言われた通りに私は大人しく体育座りをしていた。

「にしても…鴆君が姉ちゃんのことを苦手に思ってたなんて意外だな…やっぱり何かしたんじゃないの？」

「そんなこと無いよ、思い当たる節なんて一つも…」

と、想起しようと顎に手を置く。

すると、一枚の羽根がふわりと目の前を横切った。
それは先刻、屋敷に訪れた鴆の羽根だった。
今度は朧車が焦りを含めた声を上げる。

「若！！鴆様の屋敷が…
か、火事ですよー！！
わー…ど、どうします！！？」

外を覗くと鴆の屋敷からは真っ赤な炎が燃え上がっていた。
建物は一部焼け朽ちており、安全地帯では鴆とその部下が彼を囲っている。

鴆は刀を支えに、倒れぬよう力を奮い立たせていた。

「「鴆(君)！！」」

私達は直様駆け寄り、鴆の身体を支える。

「ごふっ…リクオ、クソ餓鬼…なんでオメェらがここに…お供はどーした？
俺じゃお前らは守れなねぇってのに…。」

クソ餓鬼とはなんぞい。と軽口を叩ける状況でもなかったので無視することにした。

「烏天狗…こいつらは？」

「わかりませんが…鴆一派の幹部だったと思います。」

ソラを連れて来なかったのは失敗だったか。
生憎、彼は趣味である散歩に出かけて、屋敷には留守だった。
学校に行く時はいつも見えないところで、護衛をしてくれていたが今は指笛をしても彼には届かない。

その頃ソラは散歩から戻り、姿が見えない主を探していた。
たまたま近くにいた首無しに声をかけ、本人の居場所を尋ねる。

「あいつはどこだ？」

「Aですか？
あの娘ならリクオ様とともに鴆様の屋敷へ赴きましたよ？」

その一言でソラの眉間に皺がよる。

「はぁあああ！あの馬鹿が！！
またワシに何の断りもなくどっか行きよって！」

「まあ、まあ。今回ばかりはすれ違いですし、帰ってきたら怒らず迎えてやって下さい。」
(物凄く怒りっぽいけど、意外と過保護なんだな…)

・・・

「くく…丁度い…ウツケ者の反対派は幹部にも多くいると聞く…。
殺してオレのハクがつくってもんだ！！」

蛇の妖怪は私達を目掛け襲いかかってきた。