『___________________』【ぬら孫】 (ページ38)

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第三十五幕ページ38

持ってきた物は大きな巻物だった。
それをバッと広げると日本地図や代紋なような絵が書かれている。

これは『組織図』だった。

烏天狗は錫杖を指示棒代わりに一つ一つ説明していく。

「こうして見ると、奴良組の貸元は多いんだね…。
しかも広い。」

Aは興味津々に画図を見る。

「左様でございます。
日本には古来より様々な妖怪がいます。

海のもの…山のもの人型・獣・付喪神…その殆どが『闇』にひっそり生きる『弱い』者なのです。

それら弱い妖を守る器…それが奴良組の一面でもあるものです。
リクオ様、あなたがこの一面も継がなければ誰がやるのですか。」

・・・

私も、そう思う。

この明るい世の中は、闇の住人にとっては非常に生きづらい環境となっている。

三代目を継ぐならリクオをおいて他はない。

…それでも、私は彼になって欲しいと言えない。

四年前のあの喧嘩が原因だというよりも、単にそういう押し付けが嫌い(・・・・・・・・・・・)なだけかもしれない。

そんな経験があるわけでもないのに、私は微かな嫌悪感を抱いていた。

でも、皆がリクオに魑魅魍魎の主になることを期待している理由は分かる。

〝妖怪の総大将が人間だったら変でしょ…？〟

彼は気づいていないんだ。
自分の本当の力を…。

リクオは鴆に謝りにいこうと詫びの妖銘酒を手に取る。
ついでに人間であることも説明して、向こうに理解してもらおうとするようだ。

そんなリクオに烏天狗は半ば諦めの様子を見せた。

「私もついて行っていい？」

「別にいいけど…鴆君大丈夫かな。」

リクオが案じているものは、私と顔を会わせて鴆が体調を崩さないかどうかということだろう。

私はムッとして、靴に履き替える。
実はそのことについて文句を言ってやりたいのだ。

「ヒトの顔を見て血反吐吐くなんて信じらんない！
私が何したっていうのさ！？」

「ハハ…気にしてたんだね…。」

烏天狗も一緒に行くことになり、私達は朧車に乗って鴆の屋敷へ向かう。

私も期待している。

〝世の妖怪どもに告げろ。
オレが魑魅魍魎の主となる！！
全ての妖怪はオレの後ろで百鬼夜行の群れとなれ！〟

四年前のあの日から、まだ希望は潰えていないのだと。

私はずっと期待している。