『___________________』【ぬら孫】 (ページ35)

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第三十二幕　リクオ、義兄弟に怒られるページ35

「んーー！！
学校終わった！！」

緊張した筋肉をほぐすように、両手を挙げて全身を伸ばす。

Aは無事転入手続きを終わらせることができ、気持ちよく帰り道を歩く。

隣にはスクールバッグを肩に背負ったリクオの姿もあった。

「姉ちゃんお疲れ様、一段落ついてよかったね。
でも、一年もしたら同じ学校に通えなくなるのか…
なんだか寂しいなあ。」

眉を八の字にしてにこりとするリクオ。
そして、ばつが悪いような態度でAから顔を逸らす。
そんな彼をAは後頭部に腕を組みながら横目に見ていた。

「姉ちゃんはいつまでウチにいるの？」

「さあ…高校生からは一人暮らししたいとは思ってたけどね。」

「え！それってもうすぐじゃん！」

彼女がしばらく奴良家で居候すると聞いた時は、素直に嬉しかった。
しかし、いつまた離れていくのか分からない。
その言葉を聞いてリクオは落胆した。

あからさまに沈んだ彼にAは一言申す。

「私は〝思ってた〟だけだよ。

高校生になってもバイト探して、どっかの安いアパートを借りられるくらいのお金も貯めないとだし…あと数年はお世話になるかな。
だから、そんな不安そうにしないで。」

リクオは自分の気持ちを見透かされたことに羞恥心を覚える。
悩みの種が一つ減り、ホッとするもリクオの心は晴れずにいた。

彼女の母親のことだ。

小学校の頃から一度も見たことがない。

運動会も、合唱祭も、恐らくは授業参観にも来たことはないだろう。

不自然に姿を現さない彼女の母親を不可解に思う。
何度か家に遊びに行きたいと彼女にも伝えたが、いつも話を誤魔化されていた気がする。

まるで、その内容に触れてほしくないと隠しているかのように。
今回の家出といい、バイトといい彼女の意思は早い歳で自立したものとなっていた。

母親は彼女を迎えに来るつもりも、学校以外の金銭的援助もさせる気がないのかもしれない。

もしかして……と幼い頃から抱えていた疑惑の念。
しかし、それを口にすれば何かが壊れる気がした。

自分にはそれを話す勇気を持ち合わせていない。

今のこの関係に満足しているのだ。

「それよりもさ！
今朝のカナの反応がすっごく可愛かったよね！
『お姉ちゃん～』って泣きながら抱きついてもうキュン死しそうだったよ…。
あんな別嬪さんに育ってくれて私は…」

と、熱く語る彼女にただ同調する。

___せめて、あの家にいる限り。

ボクが側にいる限りは…
君に寂しい思いはさせない。