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第二十九幕 ページ31

事が終わり、夜食の時間。
彼らは豪勢な鯛の料理を前に瞳を輝かせていた。

それに添えた彩り豊かな山菜、ほかほかの焚き込みご飯と桜型の人参が入った味噌汁。

一品の料理がこれほどまでに食の本能を刺激するものとは二人は知らなかった。

「ソラ…こんなに立派な夜食なんて初めてだよ…。
毎日雑草を積んで必死に食をやり繰りしてた日々が馬鹿みたいだ…。」

「たわけ、自給自足こそ里の教えであり、厳しい環境の中食べる飯が最高なんだ。
それにおまえは度々この屋敷に潜り込んで飯を食わせてもらってただろう。

…いやそれにしても、本当に食欲のそそる料理だ。」

奴良家の食事は長い居間を四列に並び、対面した形で食事をとる。

総大将やリクオはその前列で正面を向き、一段高い場所で食事をする。
最も宴や祭りごととなると無礼講ということで自由な席になる。

せっせと食糧を配膳する毛倡妓が二人を見て苦笑いをした。

「もう少しで終わるから待っててね。
だから二人とも涎は垂らさないで…。」

Aの右側には首無しが、ソラの左側には黒田坊が座った。

「そんなに貧しい暮らしを?
苦労していたんだな…。
今日は若菜様が張り切った作った料理だ。
二人とも腹一杯に召し上がるといい。」

首無しがニコリと微笑みかけ、Aはその顔にうっとりし、ソラは優男めと睨んでいた。

配膳が終わると、一斉に頂きますと言い、早速身の柔らかい鯛に箸をつける。

ソラは箸が使えないので平たい皿に盛り付けられた料理をペロリと平らげる。

「「うま〜い!!」」

二人はどこぞの料理番組のような感嘆の声をあげ、至福の時を噛み締めていた。

「この家の料理が口に合ってよかった。
拙僧は黒田坊。
時にソラ殿、先ほどの抗争を拝見させて頂いたがなかなかの身のこなし…相当の戦闘力があると見た。
ぜひ手合わせを願いたいものだな。」

「ほう、黒田坊か。
この儂の力量が判るとは、気に入ったぞ。」

ソラは初めて奴良組の屋敷に入ったが早くも馴染みつつあるようだ。
反対側の列にいた納豆小僧が立った。

「でも、Aに負けたじゃねえか!
本当は大して強くなかったりして…」

弱いもの扱いをされることが大嫌いなソラ。
耳をピクリと動かし、鋭い視線を納豆小僧に向ける。

「儂が弱いだと?
相手が人間だから手加減をしてやったんだ…あれが全ての実力だと見切られては困る。

…納豆小僧か…その藁を破ればさぞかし美味しい納豆が噴き出すんだろうなあ…」

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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