『___________________』【ぬら孫】 (ページ4)

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第三幕ページ4

翌日。リクオは学校の準備をしていた。
毎朝の支度は屋敷の僕たちが手伝っており、総出で主を迎える。

この支度にいつも時間がかかってしまうのだ。

「若、くつです」

「靴下です」

「足洗いです」

「逆逆！！もうみんなしっかり！」

リクオは身支度を整えると、屋敷の門を抜けてバス停へと向かった。

バス停には、二人の少女が立っている。

「あっきたきた。
おーいリクオ！！」

「リクオ君おっそいよ！
もうバス来るし、Aお姉ちゃんを待たせるなんて…」

またかとヘラヘラ笑うAと遅れてきたリクオを叱る少女、家長カナであった。

三人の出会いはリクオとカナが小学一年生に上がった頃である。
幼稚園から付き合いのある二人とは別に、Aは後から知り合ったのだ。

最初に声をかけたのもこのバスの中。
リクオがカナに僕たちの話をしていた時、当時小学三年生のAが興味を持って接してきた。

立場上先輩にあたる彼女が近づいてきた時、新入生の二人はとても緊張していた。
しかし、彼女の気さくな性格と面倒見の良さが二人の心を開かせ、あっという間に仲良くなっていた。

以来三人で遊ぶようになり、二人からは〝お姉ちゃん〟と慕われている。

特に〝妖怪の存在〟という繋がりを持つリクオとは、本当の姉弟のような関係だった。

これはカナにも言えない、二人だけの秘密である。

「姉ちゃん！今日もうち来るでしょ？」

「うん、若菜さんに挨拶してから部屋にいくよ」

あまりにも仲睦まじい姿に、カナは小さな嫉妬の炎を燃やす。
Aの袖を少し引っ張り、上目遣いをした。
その愛らしい仕草に、彼女の胸がキュンと鳴る。

「…リクオ君ばっかりずるい。
また私の家にも遊びに来て！」

「今日はボクの番だからね」

「こらこら私のために争わない。
だが、苦しゅうないぞ。」

・・・

学校というものは実につまらない。

授業中に鉛筆でペン回しをするAは大いに思う。

ここは学舎。将来大人になって、社会に溶け込むためには勉強をしなければならない。
それが如何に自分にとって大切なのかは重々承知している。

だが、苦手な科目【算数】を目の前にすると退屈に感じて仕方ないのだ。
完全に集中力が切れている。
ぼーっと時間が過ぎるのを待つと、教室の扉が開く。

クラスの全員がそこに視線を向けると、扉の向こうでは教師が一人と身なりをきっちり整えた女性が一人。

その女性にAは眉を顰める。

「母さん…？」