『___________________』【ぬら孫】 (ページ30)

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第二十八幕ページ30

あれからソラとAの抗争は続き、好戦的な奴良組は賭けをし始めた。

どちらが先に降参するか。

もちろん、妖怪のソラの票が圧倒的に多かった。
不平等な賭けではあるが、Aも華奢な身体の割によく動いている。
その反射神経も侮れない、わずかな可能性を感じ人間のAに賭ける者もいた。

だが、それも限界が訪れようとしている。

疲弊しきったAは何もないところで躓き、地に伏せた。

「「あ。」」

全く疲れを見せないソラは、この好機を逃すわけもなく一直線に飛び込む。
リクオは止めるよう皆に指示をするが、相手の方が早かった。

眼をぎらつかせたソラに向かって、Aは命乞いをする。

「待て待て待て！！
ソラ、お願いだからストップ！お座りぃ！！」

「問答無用！！」

誰もがソラの勝利であると確信した。

しかし、あと一歩というところでソラが突然倒れ出す。

瞼を閉じ防御の構えをとっていたAが恐る恐る、表情を窺った。
眼は白く上を向き、だらしなく舌がはみ出ていた。
さらに、腹の虫が盛大に鳴ったことから彼の限界が頂点に達したのだと分かる。

Aの勝利に彼女に賭けた者は大喜び。

「さっすがAだぜ。
いろんな意味であり得ねー！」

「あんたの晩ご飯は賭けた分きっちりもらうからね」

「まじかよ…こんなの有りかよ…」

不満の声があがる中、リクオは事態が収集ついたことに安堵していた。
そして、彼女も心底安心しきった顔で鳴り止まない鼓動を落ち着かせていた。

(あっぶねー。昼にコンビニでグミ買っておいてよかったー。)

その様子を観客として眺めるぬらりひょんは愉快そうであった。

「全く、少しは淑女の嗜みを覚えたのかと思えば昔と変わらんではないか。
相変わらず品性の欠片もない…。
まさにおてんば娘。」

いつの間にか、総大将の横には烏天狗が浮遊していた。

「そんなこと言いおって、実はお前さんも内心喜んでおるんじゃろ。

なんとも不思議な娘じゃよ。
ここに初めてきた頃からそうじゃった…。
自由奔放で気分屋。
ふらりと現れては居座りつき、皆の心を開かせ魅了する…まるでワシのようだ。」

確かに総大将との共通点は多い。
もし、妖怪で例えるのなら〝ぬらりひょん〟がしっくりくるだろう。

「それに、ワシは期待してるんじゃ。
あの娘はきっとリクオの力になるとな…。
そう思わんか？烏天狗よ。」

「…まあ、否定はしませぬ」

渋々とした表情の烏天狗に総大将はまた笑った。