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第二十五幕 ページ27

小妖怪に連れて来られた場所はぬらりひょんの私室だった。

襖は閉じられていて誰かと会話しているようだ。


「ちょっ、じいちゃんは今忙しいんじゃ…
というか何でここに?」

未だに趣旨が掴めていないリクオを見ては「フフフ」と揃ってニヤけている小妖怪達。
こうも焦らされるとあまり気分の良いものではない。

「若もきっとお喜びになりますぞ!」

「さあ、部屋にお入りくださいませ。」

もしかして、じいちゃんがボクを呼んだのだろうか。
そう考えたリクオは祖父に一言をかけてから襖を開けた。



中には、ぬらりひょんと少女が向かい合うように正座している。


「嘘………なんで…」


先に視界に入ったのは肩まで伸びた伽羅色の髪。
襖が開くとこちらに振り返り、その素顔を現す。

活きいきとした若草を彷彿させる緑の瞳。
右目の小さな泣きぼくろ。



…忘れるはずがない。


ずっと、待ち焦がれた人。

その人は微笑んでリクオに身体を向ける。

「リクオおかえり。
こんな夜に何して、グフっ!!」

言い終わる前にリクオはその人へと体当たりをした。
襖の外で見守っていた小妖怪はあわあわと狼狽る。
体当たりによる衝撃音で近くの妖怪は何だなんだと近寄ってきた。

「ちょっおま、押すなよっ!」

「あの方はもしや…」

「若が女子(おなご)を押し倒してらっしゃる!?」

「何?何?みえないよー」


襖の外は一気にギャラリーが増え、混雑状態だった。
ぬらりひょんは黙ってお茶を啜る。

リクオは胸ぐらを掴み、グッと自分に引き寄せる。

(もしかして、私会って早々に殴られる!?)

Aは覚悟して目をつぶる。
だが、返ってきたものは痛みではなく…




熱い抱擁だった。

「リ、リクオさん?」

顔は胸に埋まり隠されている、だが肩が小さく震えていることから泣いているのだと理解する。


「待ってた…姉ちゃんのこと、片時も忘れずに。
絶対帰ってくるって信じてた!!」


『また会いましょう』という小さなメモ書き。
あの時、リクオは『これは姉ちゃんがしてくれた約束だ』と認識していた。

だから、今日まで信じて生きてこれた。

もし、あの紙に『さようなら』なんて書かれていたら…一生立ち直れなかったかもしれない。

もう離さないという意思表示なのか、リクオはぴったりと密着している。

Aはその想いを受け止めるように背中に腕をまわし、頭を撫でてやる。






「おかえり…姉ちゃん…」


「ただいま…リクオ。」

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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