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第二十三幕 ページ25

「なんもないねー」

「ホントだな…拍子抜けするくらい」


それもそのはず、出現させないよう影で食い止めていた者がいたからだ。

しかし、さすがのリクオにも疲労の色が見え始める。
みんなが前進するなか、後方で膝に手を当て息を整える。

(だめだ…とても一人では庇い切れない…
バレるバレないの問題じゃなく!!)

「ここでラストかな?
お、食堂だって。」

そこは今までで断トツに薄気味悪い部屋だった。
何の警戒心も抱くことなく、島を先頭に足を踏み入れる。

「ま、待って!」

「へぇっ…いい雰囲気。
すっごい出そうですよ清継くん。」

すると、隅っこから肉を咀嚼するような音が聞こえる。
島は気になって手にある懐中電灯をそちらに照らした。

そこには、複数の人が密集していた。
明らかに人とは言い難い容姿と鼻を抉るような腐敗臭。
それらがこちらに気づき、動きを止めた。
間から見えたのは、骨になるまで食い散らかされた野犬の死体だった。

(しまった!!)


「うわあああああ!!」

「で…出たあああ!!」


妖怪たちは新たな獲物を見つけ、一斉に襲いかかる。
先頭にいた二人も怖気づいて脱兎の如く逃げ出す。


「リクオくーーん!?」

二人の悲鳴に異変を察したカナは目を閉じた。

(くそ…どうする…全然間に合わない!)

妖怪がリクオに手を伸ばそうとした。









ほんの一瞬…。

コンマ何秒という単位で揺らめいた光。

手を伸ばそうとした妖怪の指先に火がついたように見えた。


だが、それを覆い隠す吹雪が後ろから流れる。


「リクオ様、だから言ったでしょ?」

そう囁かれ後ろを振り返る。
瞬くまに妖怪たちは制圧され、雪女と青田坊から逃げ出していった。

「こーやって若ぇ妖怪(やつら)が奴良組のシマで好き勝手暴れてるわけですよ。」

あっけらかんとしたこの状況にリクオは困惑の渦へと落ちる。

「ど、どういこと…?
だって、今君ら学生で……え?」


「だから『護衛』ですよ!
確か烏天狗が言ったはずですけど。

四年前のあの日…必ず御供をつけるって!
知らなかったんですか?
ず〜っと一緒に通ってたんですよ!」

二人は人間の姿へと変化した。

「聞いてない!聞いてないぞーー!!」

「いいえ、確かに言いましたぞ。
この烏天狗が。」

今度は背後の窓から烏天狗が現れた。
烏天狗の説教が再び始まり、リクオの怒鳴り声が旧校舎で反響する。


「ボクは平和に暮らしたいんだぁあ!!」

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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