『___________________』【ぬら孫】 (ページ22)

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第二十幕ページ22

学校に行くのを見届けた者たちは、相変わらずの若の姿に溜め息や呆れが抑えられずにいた。

あの日の夜は『この方が我々の長となり、導いてくださる』のだとばかり思っていた。

烏天狗もまた、空中で胡座をかきながら遠くを見つめる。

「やれやれ…リクオ様が三代目を継ぐのはいつになるのやら…」

もしも、と仮説を立てる。
リクオが三代目の就任を決意してくれる…その重要な鍵となり得る彼女(・・)を思い浮かべる。

(あやつがいればまた違ったのか…？)

リクオにとって紛れもなく特別な人間。
もしや彼女の言葉なら耳を傾けてくれるやもしれない、と考えていた。

____ここは浮世絵町。

馴染み深い土地に足を踏み入れ、その景色に懐かしさを覚える。

これから会う人達のことを考えては胸を躍らせ、キャリーケースを引く少女とその後ろをついていく一匹の獣。

「いやー久しぶりだね、浮世絵町。
みんな元気にしてるかな？ね、ソラ。」

「もたもたするな…。
わしは早くこの荷物を降したい…。」

ソラの背中には大きな包み袋があり、紐で身体を一周させて括られている。

送り犬はさほど大きな妖怪ではなく、中型犬よりガタイが良い程度だ。
その中でもソラはよく育った方なのか、その体長は四尺(約121㎝)を超える。

そのためか完全に運び屋扱いされている。

成長したという意味では彼女も同じだ。
短かった髪は肩まで伸び、ふわりと風に靡く。
昔のような不格好ではなく、新しい制服を着ておりすっかり小綺麗になっていた。

背は………大して伸びていない。

だが、彼女はもう十五歳。
見た目も心も大人へと近づき、子供の頃に比べれば女性らしさが増していた。

「まあまあ、新しい家にはもうちょっとで着くよ。
その前に喉渇いたからコンビニ寄るね。」

「早よいけ。
こっちはずっと重くて辛いんだ。」

「はいはい」

眩い太陽に手をかざして天を仰ぐ。
日差しは容赦なく照りだし、雲ひとつ見当たらない青空となっている。

今日は快晴だ。

「うん……いい天気だ。」