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第十九幕 リクオ、夜の学校をねり歩く ページ21

奴良リクオ。十二歳。
現在中学一年生。

万物は流転する。
ヘラクレイトが提唱したこの概念は全てに通じる。
そして、人もまた変わるもの。

リクオの背は伸び、学ランに身を包める歳になった。
幼少期のような悪戯っぽい雰囲気はなくなり、今は立派な人間になることをモットーに真面目な性格となっている。

そして、今も尚奴良組本家の三代目となることを頑なに断っている。

そんな態度のリクオを見兼ねた烏天狗は片手に雑誌、もう片方に折り畳み式の携帯を開き、朝から説得を試みる。


「こっちの週刊誌には都市伝説。
こっちは河童。

そして…インターネッツなるシロモノには『現代妖怪』の情報がズラ〜リ!!

世は妖怪ブームになっているのです!
どう責任を取るおつもりですか?」


「だから…世間の妖怪ブームがなんでボク?」


リクオは手に持った手杓子で水を汲み、植木に水をかける。

烏天狗の目がカッと開いた。

「若がいつまでも奴良組を継がずにプラプラしてるから!!

雑魚妖怪や若い妖怪どもになめられてこーやって縄張り(シマ)を荒らされているわけですよ

かつてのあの快刀乱麻の大活劇!!
あれは何だったのですか!!」

そのようなことを言われても困る。
リクオはあの事件の出来事に関しては全く覚えていなかった。
まるで大きな闇に呑まれるような感覚、ただ深く落ちては眠りにつく。
その後のことなど一切記憶にない。

気づいた頃には全ての事が片付いていた。


____そして、あの人(・・・)もボクから姿を消していたんだ。

「おうリクオ。
朝っぱらからなーんの話をしとんじゃ。」

大妖怪ぬらりひょん。
朝食をのんびりと過ごしていたが、外の騒がしさにそちらに意識を向けた。

「じーちゃんが放任主義だから、かわりにボクが怒られてんの。」

「しかたなかろう?
ごらんの老体…お前が早く妖怪の総大将を継いでくれねば…わし死ぬな」

右手を口元に運びゴホゴホと咳き込んだ。
老い先短く、弱り切った老人を演じる。


しかし、孫は冷たかった。
その程度で通じる訳もなく、池にいる河童に胡瓜を与えながら強く訴える。

「いいかい?
ボクはフツーの人間として暮らすんだ!
じーちゃんみたいにはならないからね!」

これはあの日からリクオが決意したことだ。


その後も世の中は危ないだの、イジメだのしのごの言う烏天狗のせいで周り(特に青田坊)が反応する。
これ以上ここにいては面倒になると判断し、逃げるように学校へ行った。

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作者名:レモンティー | 作成日時:2020年5月6日 16時

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