『___________________』【ぬら孫】 (ページ17)

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第十五幕ページ17

「ごめん…でも、母さんを変えてしまったのは私の所為なの。
あの人もただ寂しかっただけ…
…今度のお父さんとは幸せになれるといいなあ」

ソラは悟っていた。
今度も絶対に上手くはいかない。
その〝幸せ〟は三人で築き上げるものにはならない。
Aは生贄なのだ。

親の負の感情は全て彼女へと矛先を向けられる。
ストレスの捌け口、都合の良い召使い。
その程度にしか思われていない。

さらに、女の方は外面がよく夫をも誑かし、狡猾な手口でこの存在を隠している。

それでも、この子は逃げようとせず何十年も耐え続けている。
幼いながらのその強さの正体は何なのか。
その心には支えとなるものがあるのか。

長年一緒にいるソラでさえも掴めないでいる。

「……お前の幸せはいつやって来るんだろうな」

「んーどうかな？
私には友達がたくさんいるし、側にはソラもいるし充分幸せ者だと思うけど…
そんな辛気臭いことばっかりじゃなくてさ。
もっと楽しい話をしよ！
私、今日は腕によりかけてご馳走を振る舞うぞー！」

Aの凄いところは、どんなに苦しい状態になっても前向きに考えて周囲を明るくする。
まるで一筋の光、希望のような存在だ。

今日は大好きな街や友達と別れる日だというのに、祝いの如く馳走を作ろうなどと。
ただの能天気なのか、はたまた阿保なのか。

それでも、ソラはそこが彼女の魅力であり強さだと捉えている。

「それもそうだな。
帰ったら儂は赤飯が食べたい。
あとは酒があれば最高なんだがな。」

「それはさすがに無理～」

そんな、たわいもない話をしながらもAの胸中にはリクオとカナへの寂しさを感じていた。

二人は黙って勝手に出てゆく私を怒るだろうか。
それとも悲しく思うのだろうか。

どちらにせよ、二人には辛い思いをさせるのだろう。

「ねえ、ソラ」

「何だ」

「明日、ちょっとお願いがあるんだけど…」

・・・

次の日の朝。

いつものバスにお姉ちゃんがいない。
カナとリクオは不審に思っていた。

たまたま体調が悪くて欠席しているだけ？
それとも、遅刻をしてしまったのだろうか。

一日くらい学校に来なくても珍しいことではない。
それ相応の理由は思いつく。
だが、朝から元気な彼女の姿を見れないだけで二人は不安が募る。

リクオは異様な胸騒ぎがした。

早速行動を移し、彼女のクラスである五年二組の教室へと駆ける。

____そして、その嫌な予感は的中する。

「ああ、飛田さんなら…」