『___________________』【ぬら孫】 (ページ13)

今日:16 hit、昨日:6 hit、合計:56,500 hit

第十一幕ページ13

全員が一斉にリクオを注目する。
そこには、強い妖気を放つ若頭の姿があった。

「オレが人間だからダメだというのなら…
妖怪ならばお前らを率いていいんだな！？」

「だったら人間なんてやめてやる！」

先ほどとは別人。
横に靡いた銀色の長髪、凛々しくも鋭い目つき。
木魚達磨は一瞬でも圧倒されてしまった。

「おめーらついてきな」

踵を返し、門へと向かうリクオ。
その背後を妖怪たちがゾロゾロと並んでいく。
その横で、不安を抱えた表情をした氷麗がいた。

「わ、若…」

「あの事故に遭ったバスは、Aも乗っているんですよね…？
無事だといいのだけれど…」

「…それには心配及ばないさ」

リクオは彼女が乗り遅れて徒歩で下校したことを知っている。
あのバスにいるはずがないと、そう思っていた。

・・・

「ここで間違いなさそうだね」

一方でAは既に現場に到着していた。

警察や事故にあった子供達の保護者に見つからぬよう、人が少ない裏の方から回る。
しかし、トンネルの反対側も崖岩によってしっかり塞がれている。

子供と犬一匹では助けるにも限界がある。
せめて、中に入って子供達の安否を確認したかった。
そこで、ソラは小さな空洞を見つける。
唯一の入り口を発見したソラをAは褒め称えた。

「ソラ、すごいよ！
これで中に入れる！」

「だが、身体の小さいお前しか入れん。
儂は外で待っているぞ。
内側は暗くて建物が脆い可能性もある。
くれぐれも気をつけるように。」

Aはラジャーと言い、敬礼のポーズをとる。
四つん這いになり、穴の中を難無く潜り抜けることができた。

すると、後ろの方からケタケタと笑う声が聞こえた。

「こん時ばかりは、お前のひょろっこい身体も役に立つな。
かすりもしないわい。」

数分前の臭いという言葉をまだ引きずっているのか。
本人はやり返しのつもりだろうが、今はカナの緊急事態である。
Aは気持ちを抑え、喧嘩を買うことをしなかった。

ただ。

「私だってこれからだもん！
将来は毛倡妓みたいな(いろんな意味で)ビッグな女になるんだからぁ～！！」

敗北者の捨て台詞を吐き、暗闇の道を進む。
中はさほど崩れておらず、しばらくすると何人もの子供の泣き声が聞こえてきた。

声を頼りに近づくとバスが転倒しているのが見える。

「カナ！」

そこには、倒れた子供を介抱しているカナの姿もあった。