『___________________』【ぬら孫】 (ページ11)

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第九幕ページ11

「どうしてそんな冷たいことを言うの！？
確かに妖怪は悪いこともする…でも、悪いやつばっかりじゃなくて、人の心を持った良い妖怪だってたくさんいるんだよ！」

Aは分かっていた。
己が住む光の世界と闇の世界は決して交わるべきものではないと。

それぞれには領分があって、どちらかがその境界線を踏み越えてしまえば、自分の世界が破綻してしまう。

危険なものは避けて知らんぷりすることが、賢い選択なのだ。

Aは人の子。
人間としての暮らしを疎かにして失敗してしまったことはいくつもあった。

でも、彼女は知ってしまったのだ。
妖の存在を。そして、彼らも私達と同じ場所にいて、心を通わすことができる。

〝共存〟は可能なのであると。

そんな時に、奴良組に出会った。
〝リクオ〟という象徴に出会ったのだ。

Aは顔を上げて彼の目を見つめる。

「リクオはいつも嬉しそうに話してくれたよね。
三代目を引き継いで立派な妖怪の首領(ドン)になるって。
…それって、とても素敵なことだと思う。」

誰かが正さなければならない。
リクオにはその頂点になっていて欲しいと、Aは思っていた。

しかし、リクオは顔を俯かせる。
弱々しい声で否定の言葉を放つ。

「ボクは三代目にはならない…。
妖怪のことも二度と話さないって決めたんだ。」

「じゃあ、みんなの事は嫌「うるさい！！」」

「もう決めたんだよ！！
これ以上しつこいと姉ちゃんとも絶交するぞ！！」

興奮状態から正気に戻ると、自分がぶつけた言葉に呆然とする。
そして、すぐに後悔の念が押し寄せた。

彼はただ自分の大好きな姉が危険に晒され、失うことが怖かった。
昨日のガゴゼの発言が脳内に響く。

〝大量に子を地獄に送ってやるのがワシの業ですから〟

いつか、自分の組みの者が姉ちゃんを喰ってしまうのでは。
そんな最悪の予感をさせた。
だがリクオの気遣いが伝わることもなく、その言葉は諸刃の剣となってしまった。
Aの酷く歪んだ顔が視界に入る。

「…分かった。もう帰るね。」

掴んだ腕をゆっくり離し、Aはリクオの横を通り過ぎていく。

「姉ちゃんっ！！」

彼女はリクオの呼びかけに応えず、ひたすら走り続けた。