第25話 ページ29
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と、思ったのも束の間。
真選組がその場をあとにし、ふたりきりの空間となった今、差し出されたのは一本のヤクルコ。
そしてそこから導きだされる答えは…
「おい、これまさか高杉の奴からじゃ…」
「さあ、どうだろうね」
「お前な」
「なにさ。銀時にあれやこれや言う権利なんてないと思うんだけど」
同じ視線になるほどの高さだろうか。
座り込みにこりと微笑む確信犯を前にすれば、これではどちらが悪事を働いているのか混乱させられるそんな状況下。おそらく、この女は楽しんでいるのだろう。
風魔絃という女は昔からそんな掴みどころがあるようでない女だったから。
けれど、だからと言って銀時が退く理由もないわけで。
意を決し、ヤクルコを手にとり飲み干す。
ごく、ごく、ごく。
迷い一つもない様子で、飲み切れば憎たらしいほどのしたり顔を浮かべる。
浮かべた、という表現が正しいだろうか。それが次第に段々と体調不良を訴え始めたのは一目瞭然、すべて見越した上での行為だったことに気づいたときには後の祭り。
「お前…普通、ここまでやるか…なにいれやがった!」
「絃ちゃん特製、お腹の通りが良くなる"魔法のお粉"かな?」
「なにが魔法のお粉だこのやろう…ただの下剤じゃねぇか!!あっ、もう無理。やばい、でる」
「我慢すると身体によくないよ?」
「人間の尊厳失えっつーのか、こいつ」
ほとほと許す気のない同胞を目にすれば、意を決したかのように見据える。その瞳は普段の気怠そうな瞳よりも凛々しさをもった…切羽詰まった表情で、放たれる。
「悪かったっつーの。素直な
照れ隠しから放たれた告白も及第点だったのか、思惑通りとにんまりと笑みを浮かべた絃はといえば銀時の頭にわしゃりと手をのせ、撫でるかと思いきやその毛根を引き抜く勢いで引き寄せ。そして―。
「満足か、じゃねぇだろ?ん?」
「すんませんでした」
「わかればよろしい。しゃーなし、お付き合いしてやるから感謝しろ?銀時」
そう放つ彼女はどこか清々しく、幸せげな様子か。
ところで、先程の特製お薬についてだが―。
「そういえば銀時、お腹の調子悪いんじゃなかったっけ?」
「本当お前のそういうところ嫌いだわ、銀さん」
とんだブラフであったことはふたりだけの秘密である。
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