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第14話 ページ18

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江戸の夜明けが見たい。




そんな彼奴の言葉を茶化したことを後悔するまで時間は要さなかった。
あれは、確か2月13日。
珍しく入った仕事におわれ疲労した身体を労わりながらの道行き。

仕事が入ることさえも珍しいが、特筆するならば万事屋の主人たる銀時1人に対する依頼は滅多になく今回の一件はその帰り道でのことであったわけだが。



「あ、」

「あ?」



その帰りでの道行き。
ビニール袋をぶら下げ、気だるげに歩く様を目にすればおそらく今日はオフだったのだろう。
ガーネットの瞳に、カールした漆黒はストレートに。

そんな幼馴染、もとい風魔絃と出くわした時分。


今思えば様子の可笑しかった彼女に何故あの時、気づくことができなかったのか。
いや、きっと気づいていたのかもしれない。



「休みかぁ?良いご身分だねぇ、こちとら1日働いてきたってのによ」

「アンタよりは働いてると思うけど」

「かわいくねぇ女」

「言ってろ、アホ面パーマ」



そんないつものやりとり。
いつも通りのやりとりをしているはずだった。
そんな折、耳に入ったのは街中の報道ビジョンか。耳に届く情報といえば、どこもかしこも"バレンタイン"の6文字で漸く明日があの日だということを思い出す。

思えば、今日の休暇は神楽はチョコを作るだの言ってただろうか。


そうもなれば、目前の相手を前にその手の話題を振らないわけにはいかなかった。
理由など聞かずともわかるだろう。


気になって仕方なかったのだ。



「んで、お前。そのビニール袋。何。まさかこれからいそいそと板チョコ溶かしちゃったりするわけ?」

「…だったらなに。アンタには関係ないから安心しなさいよ」

「なにお前まじで誰かにそれやんの」

「そりゃあげる相手がいなきゃこんなもん作らないわ」

「は、」



どう考えたって可笑しい。
今まで、この女がそんな浮かれたイベントに参加しているところなんて見たことはないわけで。
幼少期だった頃はまだそんな渡来したイベントなんぞ存在しなかったからと説明はできるといえど、こうして再会してからというもの何度このイベントが通り過ぎたと思っているのか。

その数ある14日のたった1度だって、この女がまともに参加しているところなんぞ見たことがないのだ。



落ち着け、まずは落ち着くんだ。俺。
此奴があの絃が、恋愛なんぞに関心を持つ相手となれば、まずは身近の男とみていいのだろうから。

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作者名:湊/松雪 x他1人 | 作者ホームページ:なし。  
作成日時:2021年1月22日 10時

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