第13話 ページ17
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そんないつもとはちょっと変わった朝を迎えた万事屋一行。
まあ約一名、ダウンし動けないといった状況ではあるわけだが。
これだけの騒ぎを起こしておいて、下の大家が黙っているはずもなく。
「がたがたがたがたうるっさいんだよ、朝から!!!!」
案の定やってきた。
「おや、見ない顔だねぇ」
「あー痛てててて。おい、ババァ。俺はなんもしちゃいねぇぞ。どんちゃん騒ぎの原因はその女だ」
「そうなのかぃ?そうは見えないけどね」
「銀ちゃんが、姐さんに手出したアル。これはその報復ネ」
「ちょっと神楽ちゃん?なに言ってるの?俺、なにもしてないって言ったよね?」
と、まあどうみても男に不利な状況が続く中、どちらに着くべきか迷う新八。
その最中、当の女性はといえば一手にその視線を受け、瞳を潤ませる。
先程までの強者たる風格を目にした後となれば、尚のこと、この女の恐ろしさが実感できる新八であるわけだが。彼女の商売上、こんなものお手の物なのだろう。
頬を染め、瞳を潤ませ。視線を逸らす女はどこからどうみてもなにか問題が起こってしまった被害者にしか映らない。
「私、その…本当に怖くて…この人が、急に。だからつい、突き飛ばしちゃったんです…」
「おいいいいい!!つい突き飛ばしたで壁破壊って理由つけるにも無理がありすぎるんだよ!!!おい、ババァまさかこんな理由で納得するわけねえよな?!」
「……銀時。いつかやるとは思ってはいたけどまさか本当にやっちまうとはね」
「だからなんもやってねぇって言ってんだろうが!!クソババァ!!」
「だぁれがクソババァだ。このニートのゴミくず野郎!!」
取っ組み合いが始まり、やったやらないの堂々巡りを繰り返すふたり。
そんな果てのない不毛な戦争を外から眺める女は、ここからの逃走の算段をたてる。
最も古典的なやり方ではあるが。
そろそろ迎えがくる時刻。先程、そっと呼び出しておいた迎えにここへくるよう合図を送れば窓に映る巨大な影を確認。
「ナニアレー」
とそれは大層な棒読みで指をさせばその一瞬で逃げるには十分。
窓から顔を覗かす巨大な鳥に一同固まるも、女の姿が消えたことに気付くにはそう時は要さず。
「おいまさかこんな古典的なやつに俺たちハマったのか」
再び窓に視線を向けるもつぶらな瞳がこちらを見つめるのみで。
文句の1つでも言ってやろうと窓へと近づけば当然のことながら飛び去るそれを見送る他ないのだった。
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