プロローグ ページ4
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誰もが一度は疑問に思っただろう。
興味があるかないかはさておき、一度は考えたことがあるのではないだろうか。
「銀さんて、お付き合いしていた女性とか想い人とか誰かいなかったんですか」
万事屋の一室で賽は投げられた。眼鏡によって。
それは、なにかが変わった瞬間だったのかもしれない。
すべてが繋がるきっかけとなったのかもしれない。
いつも通りの日常。
大した仕事もなく、暇を持て余す銀時ら万事屋一行は居間に集いテレビをただただ見据えていたわけだが。
そんなときにぽつりと呟かれた疑問。
あまりにこのちゃらんぽらんに似つかわしくない"恋愛"という議題。
「ぱっつぁん、やめてやれよー。このちゃらんぽらんにそんな浮いた話しなんかあるはずないネ」
「そうは言っても神楽ちゃん。銀さんだってもういい年齢なんだし…一生独り身ってわけにもいかないよ」
「こんな生活力のない甲斐性なし貰い手なんていないアル」
「まあそれはそうなんだけどさ…それ言ったら終わりなんだって…」
珍しく静寂。
どうしたことか、いつもなら脊髄反射の如く"俺にだってそんな女の1人や2人いらあ!"ぐらいの返事が返ってくるというのに。
いやに静かな男は、ソファへと転がりお気に入りのジャンプを顔へと乗せたまま微動だにしないではないか。
それは聞こえないふりをしていたのか現実逃避でも始めていたのか。
よもや、懸想していたなど思いもしない。
当たり前だ。彼自身だって自覚していないのだから。
それでも、脳裏に過る女といえば1人で。
もう何年も会ってないソイツの行方なんて知らないが不思議と会いたくて。
以前片時も離れずにいたせいか、愛着のようなものが湧いていたのか。
「銀さん…?」
離れたのはアイツの方だった。
まるで、空気のようにそこにいることが当たり前だった奴は、風のようでいて…いや正しく表現するなら猫のような気まぐれ野郎だった。
「銀ちゃん…?」
どうかしてる。
「なんでもねーよ。そんなことより新八、お前今日は道場に帰るんだろ?早くいかねぇと、あのゴリラ女にどやされるぞ」
会えるはずないのに。本当にどうかしちまったか、俺は。
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