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No.30“俺”と“僕” ページ40

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“生まれる前から大嫌いだった”






ついこの間、妹に言われた言葉だ




俺とAの産まれた差はたった2分









彼女はその2分を大いに恨んでいたのは知っている。



まだああなる前に、心理カウンセラーの先生に“自分なんか生まれなければよかったのに”と相談していたのも知っている、





あいつが俺と自分の間にできた格差というものに、それについて大人たちから日々罵られていたこと。

俺は全部知っていた。





知っていたのに。







そう考えるたびに、俺も思った。

自分なんか生まれなければよかったのに、と。





俺さえいなければあの子は幸せだった。俺もこんな苦しむ事はなかった。







「…母さん、どうして死んでしまったんだ」



理由なんて知っているさ。母もまた由緒正しい名家の妻という重荷に耐え切れず

きっと、休まる場所もなく、旅立った。







「(俺にはある、休める場所が)」




そこに入れば俺は存在しなくなる。







【あんたなんか生まれる前から大嫌いだった】

【てめーを家族だと思ったこともねえよ】

【そんなだから、あんたなんて大嫌いなんだよ】






正直、Aが羨ましかった。


誰にでも自分の意見を通せて、親しい友人に囲まれて、自由に生きている。


それがどうしようもなく羨ましかった。




だからきっと、俺はあの子に褒めごとひとつ言えなかったのかもしれない。









「…ごめん、ごめんね、A」







情けない兄で



弱い兄で








「…少しの間、逃げる俺を許して欲しい」





目を閉じる。真景を研ぎ澄ませば脳裏に聞こえる、もうひとりの声









…また、お前は僕にすがりつくのか

ごめん。でも、もう限界だ。




本当、お前は弱いな。…でもきっと、僕も弱いからお前の中に居続けるのか

君は俺よりずっと強いよ。だから、しばらくの間、赤司征十郎を托す。




……あんな重荷をまた背負わせるのか。僕は君が大嫌いだよ。

…すまない。俺も自分が大嫌いだ。Aを傷付けないでね。



Aはきっとすぐ気付くよ。あの子は僕たちなんだから。

そうだね。…落ち着いたら、戻ってくるよ。







…僕の居場所、消さないでね。それじゃあ、ゆっくり休むといい。…“征十郎”









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ああ、任せたよ…征十郎。





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No.31「私は“あんた”を、絶対に許さないから」→←No.29 もうひとりの、兄。



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Minami - ありがとうございます。神作です。語彙力失いました。 (2020年9月6日 19時) (レス) id: fff859bb45 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりに - もし私の間違えなら申し訳ありませんが、キセキの世代がいる学校ということは中学生のはずなのですが、作中では現在高校生のように描かれているのは何故でしょうか? (2019年4月2日 12時) (レス) id: b3d68cf6a0 (このIDを非表示/違反報告)
つき - 笑いあり涙ありってほんとコレ。過去1最高の作品だわ (2018年10月19日 22時) (レス) id: 7f1a7cb095 (このIDを非表示/違反報告)
レオ - 赤司のシスコン発言に対してのキセキのツッコミが面白いww (2018年4月2日 20時) (レス) id: ee52622bf1 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶パフェ - 今まで見てきた黒バス作品でも上位に入る!ってか一位だわこれ!見てて飽きなかった!Good job 作者!! (2017年10月1日 5時) (レス) id: b2e6687e3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:壬生狼 | 作成日時:2014年9月22日 21時

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