二十二話 正体 ページ24
さっさと、この学園中の人間を殺してしまえばよかった。
そうしたら、こんな窮屈に生きなくてもいいのだというのに。
足が動かない、声を出すのすら無気力だ。
掴む手の力が抜けた瞬間、腕の拘束を解く。
部屋に戻ろうと歩いたが、ふと思い立って振り返った。
ため息をつき、嘲笑しながら口を開いて呟く。
「頼むから、関わらないでくれ。無性に殺意が沸いてしまう」
七松は目を擦った。もう部屋に戻ってしまった彼女の頬に、微かに見えた。
「黒い涙…？」
刹那の幻か。目からは黒い涙がつたっていた気がしたのだ。
部屋に戻ってから、Aは壁にもたれかかり眠りに着く。
相当疲れていたのか、深い眠りだった。
目が覚めると、辺りは暗く満ちていた。
「もう夜なのか…」
結構な時間を潰してしまった。
外に出るとやはり夜だ。
雨は上がっていて、雲が覆っているのか星は一切見えない。
地面には白い霧が立ち込めている。
突然髪の毛を引っ張られた。
「夫を返せ」
「子供を返せ」
「家に返せ」
耳に木霊するは、不気味な声。
頭に響く。聞きなれたあの柔らかい声。
「一生解くことができない呪いだよ」
地面から伸びる手は私の足も掴み、顔に砂が付いた。
酷く痛い。
「呪い…？」
体がうつ伏せになりつつ声の主へと問いかける。
地面に押し付ける真っ黒な手、頭に響く声に混乱する。
「そう。殺意は自分をも殺す」
その綺麗な声と、足元だけが目に映った。
「いや…！嘘だ嘘だ！」
目には涙が溢れ、黒い手が身体を埋もれさせていく。
顔が地面に擦られ、土の感触だけが身体を満たす。
「嘘だよね…？」
「黒ユリの蔦が、身体全身にいきわたった時には、お前の心臓は蔦によって貫かれる。
いいかい？これはお前ができる最大の贖罪、死んだ者の分まで、生きろ」
頭に手を置かれて、脳裏に吹き込まれるかの如く声がすんなりと入って記憶に刻まれていく。
「どうしてだよ！！ 母上！」
喉がちぎれそうな程に泣き叫ぶ少女の瞳には、母の姿は映っていなかった。
黒い手も消え、辺りは学園に戻っていたが、暗闇は戻っていない。
身体が宙に浮く感覚。生きることが、死んだ者に対する償いなのか？
母上が、そのことを望んでいるのなら、私は償いきるしかない。
この学園を元に戻し、一人で生き抜く。
誰も殺さずに、殺意を持たずに。
そんなこと、一時のくだらないお遊びだったとしても。
私は、笑っていようじゃないか。
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みこち(プロフ) - 銀鬼のサブさん» 有り難う御座います、因みに今は、ブリーチと妖怪ウオッチのクロスオーバーを書いています。まだ途中ですが、書きながら笑ってます(思い出して) (2021年5月28日 21時) (
レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 初めまして。みこちと申します。素晴らしい作品です。私も兵庫水軍と鬼滅刃や犬夜叉とのクロスオーバー書いてますが、大変魅力ある夢主です。楽しみにしてます！出来ましたら是非お越し下さい。 (2021年5月13日 9時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
輝羽(プロフ) - 見ていると話に見入ってしまいました。友人にも勧めてみたらその人もこの物語や銀鬼さんのファンになっていました。(私も) 応援しています！ (2021年4月5日 17時) (レス) id: df4ce87693 (このIDを非表示/違反報告)
星波 きらら(プロフ) - ^_^さん» その言い方は無いと思います。主は文才アピールなんてしなくても滲み出る文才があると思いますよ。貴方のせいで占ツクの民度が下がるんです。嫌なら見るな。それしか言えません。モラルを守ってネットを使いましょう。 (2021年2月15日 23時) (レス) id: 0560786132 (このIDを非表示/違反報告)
凛／月影／霖(プロフ) - 新作おめでとうございます！江戸時代からのトリップなんですね！どんな風にことが進むのか楽しみです！更新頑張って下さい！！ (2021年1月1日 23時) (レス) id: 0b140bf78a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀鬼 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時：2021年1月1日 18時
