三十話 逃走 ページ31
追ってきたのは失神者と怪我人の手当に当たらなかった七松と久々知、そして尾浜。余裕が出来て戦闘が可能となった教師達だ。
一人にここまで本気を出してきたか。侮る事はしなかったがこれもまた厄介だと顔を歪める。
苦無は残っており血もあまり付いておらずまだ使える。
先に潰すのは五年生だ。
舞台は森になり、木の上で息を殺す。
底の見えない体力と殺気に押されているのは学園側だ。
久々知と尾浜は五年の仲で共闘になれば強いか、頭の中で思考を巡らせる。
精神的に弱いであろう久々知から狙い、木の幹に足を引っ掛けては地上にいる彼の首を掴み足を浮かせた。
瞬時に首に苦無を突きつける。
「見つけた」
「なっ…!?」
「動くな。動いたら刺す」
「勘右衛門、俺は大丈夫だ…!」
「弱いな、気配にすら気づかないとは。これでもお前の投げた手裏剣が刺さったのだぞ?」
「…一つ聞く。学園を襲わない保証は無いんだな?」
「当たり前」
久々知を掴んでいる手に力が入った。顔と顔が近く、耳元で会話する。
「だが、もう何をすれば良いかわからん、やるべき事は済んだ。そもそもこの戦いに意味などない」
「なんだよそれ…忍びである意味が無くなったのか?」
「さっき襲ってきた忍び達との関係って…」
「そうだな…余興だ。教える。あいつらは親を殺して目を切った人間だ。だから殺した、それ以上でもそれ以下でもない」
教師達に囲まれた。無論逃げる他無かろうと、木から降りては飛んでくる手裏剣。避けずにそのまま掴んだ。
「避けたら久々知か尾浜に当たっていたな」
棒手裏剣を地面に捨てては殺気立っている教師達。
「忍び殺しとやらを始末したのだからお礼でもしたらどうだ?」
ケラケラと嘲笑する様子は本心かもわからない。
「このままじゃ出血で死んでしまう。降参して学園に捕らえられるか、意味もない戦いをして深い傷を負うか、選んでくれ」
土井が口を挟んだ。自身が殺されそうな立場だと言うのに、久々知と尾浜は心配そうな瞳をしている。
実に腹立たしい。
「選ぶ?選ばせる立場ではないだろう、そもそも何故捕える?」
「学園を襲った者について、詳しく聞きたい」
「利益もないのに協力しろと?馬鹿げた話があったものだ」
Aの言った通り、戦っておいて理不尽な話だ。
「協力してくれるなら、内容によるが条件を飲む」
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あまね(プロフ) - すきー! (12月10日 11時) (レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ルシア(プロフ) - 久しぶりの更新お疲れ様様です!! (9月19日 21時) (レス) @page32 id: 75dd258af5 (このIDを非表示/違反報告)
みょーが - 主人公が毒にだけ味覚が働いたり、興奮で身体能力が上がったりするところ、とてもしっかり作り込まれているのを感じます!銀鬼さんの小説は場面展開がわかりやすくて物語の世界に没頭できます。これからも更新楽しみにしておりますね。 (2023年4月10日 22時) (レス) @page25 id: c021c07d07 (このIDを非表示/違反報告)
おろししょうが - 刺殺と視察掛けてるの天才 (2023年4月10日 19時) (レス) id: 1e91c7e46b (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 作品、読ませていただきました。時間の流れ方だとか誰がどんな動きをしているのかだとか、それぞれが繊細に伝わってきてしっかり理解することが出来て、本当に凄いと思います!キャラをおさらいしてまた来ます!続編楽しみにしています! (2022年1月5日 20時) (レス) @page14 id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀鬼 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時:2020年9月21日 15時