片目のシノビ

二十二話　シサツ ページ24

「A、お前が忍び殺しか？」

「え…そんな訳ないじゃないですか」

何か勘違いしている様だが、こっちも男を追っている。

「嘘を吐くな…！ 全て演技だったんだろう、学園に近づくための…！」

「違いますって、皆さんとは偶然出会っただけで」

「じゃあ何故こちらの情報を探る？」

冷静さが欠けている、首が少しばかり切られた。
血が滲み、着物に赤い雫が滴り落ちるものの土井は気づいていない。このままでは苦無がさらに奥へと入ってくる。

「痛いです…！ 誰か、助けて…！」

涙目になり声を大きめに出す。近くで見張っていた上級生達も異変を察知したのかすぐに彼を取り押さえた。

「土井先生！ 流石にやり過ぎです、見たらわかるでしょう、彼女は違う！」

立花が取り押さえ、解放され地面に倒れる。
善法寺が布で傷口を押さえAを立たせた。

「大丈夫だったかい？ 先生も下級生を守るのに必死だったんだ、怒らないであげて…」

「いえ、怒ってはないです。疑われる様な事をした私が悪かったんですから」

救急箱から包帯を取り出しては彼女に優しく巻いた。
擦り傷程度で済んだは良いが、もし制止が効かなかったらと思うと…。

「土井さん、大丈夫ですか？」

「…すまない、取り乱してしまった」

「Aさんは医務室に行っていてください、後は僕たちがやっておくよ」

「わかりました、ありがとうございます」

もし制止が効かなかったら━━━あのまま全員殺していた。

包帯を触ると血が微かに香った。応急だが丁寧に巻かれている。
復讐対象に間違われるとは思っても見なかったが、やはり教師。勘は良い様だ。

医務室に入る彼女を、男が数名、塀の外から覗いているが気づいていない。六年生が止めたとはいえ刺し殺されかけたのだ、誰かを探す余裕は無い。

「随分と大きくなったじゃないか。目を抉った時はまだ餓鬼だったが…、これまた楽しめそうだ」

「これまた趣味が悪い、学園には餓鬼がうじゃうじゃ居るぞ」

「俺が調合したんだ、焙烙火矢で全員殺してやる。上手くいかなかったとて、大火傷で忍者になれるはずがない」

ケタケタと薄気味悪く笑う男が二人。一人はAを知っている様だった。

「今日の深夜が楽しみだなあ…視察が捗る」

「あ、六年の男が入った…、しかし良い時にこっちへ来れたな。若い教師はAの所為で憔悴している」

筋肉質な体。まだまだ若い声で話す二人は集団などではない。

暗殺者が来る日は、今夜だ。

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