一話 壊れた日 ページ3
目に飛び込んできたのは倒れている両親。
膝ががたついて、尻餅をついた。切りつけた男は容赦なく私に近づいてくる。
燃え盛る火の海は、朱色の龍となり、熱く、そして里の家へと喰らいついた。
「残念だったな」
「あ……」
動けない私に、無慈悲にも刀が目をえぐり、激しい痛みが全身を襲った。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
声にならない叫び声。男は口角を上げて言った。
「お前らを殺して、俺が最強になってやる」
男の顔に一直線にある傷が、笑いによって歪んだ。
なんて忌々しい。
男は炎の渦から消えて、彼女は痛みのあまり気を失った。
それから雨が降った。土砂降りの雨で火は消し去られ、里の人間も誰一人として息をする者は現れない。
生き残ったのはA一人。
血だらけの着物、無残に切られた瞳からは血が滴っている。雨で下がる体温と一緒に、ふんわりと温かな何かが私を包んだ。
―――――朝、か。
最近この夢をよく見る。
あの時の傷は痛みすら感じない。
片目には刀の傷跡。一直線に切り裂かれた跡が残っていて、忍者の仕事の上で邪魔なものだった。
「あれから九度目の春だな……」
襖の隙間から桜の花びらが一枚入り込んできた。
町人に化けて、昼間は団子屋の仕事、夜は忍びとして毎日を過ごしている。
朝の陽ざしが差し込み、一日が始まった。
暖かさは、私を助けて忍術を教えてくれた。
あの時師匠が通りかかってくれなかったら、私はそのまま出血により息絶えていただろう。
思い出すたびに、愛おしい。
あなたは今、どこにいますか？私は強くなったと、もう一度稽古をつけてほしいと夢を続けて見るようになってから、強く思うようになった。
髪を整え、片目を隠す。眼帯より、包帯よりこっちの方が特徴的にならないと師匠も言っていた。
着物を着て、仕事場へと向かう。
「おはようございます」
「おはよう。じゃあ今日も仕事お願いね」
団子屋は街の中にある。人気で昼頃は行列ができるほどだ。
厨房の中に入り、店長は下処理をした生地を丸めて囲炉裏で焼く。
火は空気を歪め、その光景はどうも既視感を覚える。
少し時間がたち、のれんが掛かれば、客が来て思考も遮られる。
早速客が来た。
「いらっしゃい！」
私は此処の看板娘、を演じている。
心にもない笑顔を張り付けて、接客をする。
私の働きのおかげで、売れ行きも上がっている。
いつもの日常。
そう、あの時のように、壊れていくのは一瞬だ。
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あまね(プロフ) - すきー！ (12月10日 11時) (
レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ルシア(プロフ) - 久しぶりの更新お疲れ様様です！！ (9月19日 21時) (レス) @page32 id: 75dd258af5 (このIDを非表示/違反報告)
みょーが - 主人公が毒にだけ味覚が働いたり、興奮で身体能力が上がったりするところ、とてもしっかり作り込まれているのを感じます！銀鬼さんの小説は場面展開がわかりやすくて物語の世界に没頭できます。これからも更新楽しみにしておりますね。 (2023年4月10日 22時) (レス) @page25 id: c021c07d07 (このIDを非表示/違反報告)
おろししょうが - 刺殺と視察掛けてるの天才 (2023年4月10日 19時) (レス) id: 1e91c7e46b (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 作品、読ませていただきました。時間の流れ方だとか誰がどんな動きをしているのかだとか、それぞれが繊細に伝わってきてしっかり理解することが出来て、本当に凄いと思います！キャラをおさらいしてまた来ます！続編楽しみにしています！ (2022年1月5日 20時) (レス) @page14 id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：銀鬼 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時：2020年9月21日 15時
