十四話 一日目 ページ16
「旅人さん! こっちのをお願いしたいです!」
「わかった、倉庫だね」
一年生の子供が丸太を塀に組み立てている中、彼女も少年達を手伝っていた。
縄を入れていた木箱も空になり倉庫へと持って行き、更に追加の縄を持って行く。
本来ならば毒の調合をしたいところだ。もうすぐ日が経って使えなくなる毒があり、すぐにでも作り直したいがそうもいかない。
昼になれば、夜行動していた者達も起き出して作業が更に加速する。
塀の設置も終わり、漸く合戦の備えが出来てきた。
「疲れた〜!」
「汗凄…、夏休みが終わったばかりだからまだまだ暑いね〜」
生徒其々が休憩に入りAも半日振りに縁側に座った。
殆ど疲れてはいないが汗はかいていて顎から落ちる。布で拭っていると久々知が茶を出した。
「旅の中ありがとうございます、よかったら飲んでください」
「いえ、こちらに泊らせてもらっている身です、力になることがあれば教えてください」
「あ! 手、血が出てますよ…見せてください」
「本当だ…気がつきませんでした。木を運んでいる時に切ったのでしょうか」
彼はAの手を取って手持ちの薄い包帯を巻く。
汗で体温が上がっており、冷たい温度が心地よかった。
「わざわざすみません…」
「当然の事です。何かあったら教えてくださいね」
照れ臭そうに笑う彼の隣では一年生が昼飯を頬張っていた。見ているだけで食欲が減退する。
「そろそろ留三郎達が来ます。用具も追加で揃ってきましたね…」
「了解。留三郎達が来たら村への橋を壊すための火器を━━」
会話を聞いては更に忙しくなることを予感していた。
全く疲れてはいないが旅人を装っている以上このくらいが体力の限界だと見せなければならない。
久々知のいる反対側に体を倒した。気を失ったかのように力を抜きどさりと身を床に置く。
「だっ、大丈夫ですか!?」
当たり前かのように肩を掴まれる。
「…眠っちゃってますね…」
「そっとしときましょ、後は俺たちが頑張ります!」
眠っている様子を続けていれば一人でに事が進む。
起きたのは夜だったが問題はない。体には久々知のもう一枚目の着物がかけられており久々に普通に寝てしまっていた。
床だったが体は痛くない。木の上で寝ることもあったせいで床の方がマシに思える。
まだ作業をしている声がありガヤガヤと声が聞こえた。
「…明日も忙しいな。これは」
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あまね(プロフ) - すきー! (12月10日 11時) (レス) @page34 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ルシア(プロフ) - 久しぶりの更新お疲れ様様です!! (9月19日 21時) (レス) @page32 id: 75dd258af5 (このIDを非表示/違反報告)
みょーが - 主人公が毒にだけ味覚が働いたり、興奮で身体能力が上がったりするところ、とてもしっかり作り込まれているのを感じます!銀鬼さんの小説は場面展開がわかりやすくて物語の世界に没頭できます。これからも更新楽しみにしておりますね。 (2023年4月10日 22時) (レス) @page25 id: c021c07d07 (このIDを非表示/違反報告)
おろししょうが - 刺殺と視察掛けてるの天才 (2023年4月10日 19時) (レス) id: 1e91c7e46b (このIDを非表示/違反報告)
らぱ(新)(プロフ) - 作品、読ませていただきました。時間の流れ方だとか誰がどんな動きをしているのかだとか、それぞれが繊細に伝わってきてしっかり理解することが出来て、本当に凄いと思います!キャラをおさらいしてまた来ます!続編楽しみにしています! (2022年1月5日 20時) (レス) @page14 id: c719b83a52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:銀鬼 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ginki/
作成日時:2020年9月21日 15時