【歌い手】出会いは偶然…だったよね？［2］【浦島坂田船】

【52】 2017年 春 ページ16

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あれからあっという間に時間が過ぎていった。
センター試験も終わり、明日には二次試験が行われる。

区切りのいい所で勉強の手を止め、時間を見てみるともうすぐ21時を迎えようとしていた。

今日は流石に寝ないとなぁ…

そんなことを考えながら背伸びをすると、部屋の扉からノック音が聞こえてきた。


『はーい？どうぞー』

弟｢…母さんが、今日はもう寝ろって。それだけ。それじゃ｣


扉の向こうから聞こえてきたのは弟の声。
面倒くさそうにため息をつきながら、母からの伝言を伝える。
伝え終わると同時に、足音が遠ざかり、どこかの部屋の扉の開閉音が聞こえた。

多分、自分の部屋に戻ったんだろうな…
ていうか、久しぶりに話したな…

徐々に落ち着いてきたものの、まだ反抗期である弟とは随分と長いこと話していなかった。
その為、今話すことができたことに対し、凄く驚いている。
まぁ、話したと言っても一方的に伝言を伝えられただけなんだけど。

母の言葉に促され、勉強道具を片付け始める。
流石に夜更かしして、明日の本番で寝不足になる訳にはいかないからね。
寝るための準備をしながら、数ヶ月前のことを思い出す。


体育祭があったその日の夜。
電話越しとはいえ大声で泣いたり、愚痴を聞いてもらったりして、迷惑をかけてしまった。
でも、次の日にL○NEで『昨日はごめん』と謝ると、｢気にするな｣とか｢無理するなよ｣とか励ましの言葉が送られてきて、嬉しくなった。

その後も、勉強のため頻度は減ったものの、彼らとは連絡をとり続けた。
唯一、変わったことといえば、以前に比べると私が悩みを打ち明けることが多くなったことだろうか。
申し訳ないと思いつつも、親身になって相談にのってくれる皆の優しさが嬉しくて、ついつい甘えてしまう。

でも、弱音を吐くことが出来たおかげで、前よりは気持ちが楽になった。
そのお陰なのかは分からないが、より勉強に集中することが出来たし、もっと頑張ろうと思えるようになった。


明日は二次試験。

正直いってすごく緊張するし、めちゃくちゃ不安。
だけど、それなりに勉強してきたつもりだし、センターの結果もそれ程悪くはなかった。
いつも通りにすれば、問題ないはず。
無意識に握りしめていた手の力を緩め、深呼吸をする。

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