顔が良いって"損"【青葉城西】

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「……なぁ、A。こんな時に言うのは違うって分かってるんだけど」



橘さんが、何を言いたいのかが分かった気がした

だからこそ、聞いちゃいけないと思った



「ダメですよ、橘さん。その気持ちは、本物ですか？」



本当に？

そう重ねて尋ねれば、言葉を詰まらせた橘さん



「私は、好きでした。橘さんのこと」



私の言葉に顔を上げた橘さん

涙でぐしょぐしょだ

私も、ぐしょぐしょなんだろうな



「でもそれは、憧れでした。地獄のような毎日に、光を差してくれたのは橘さんで、そばにいてくれたのも橘さんで。この気持ちは、恋じゃないって、最近気付いたんです」

「A……」

「酷なことを言います」



橘さんが見てるのは、私じゃない

気づかなかった訳じゃない、気付かないふりをしていた



「母を、美代子を、まだ好きなんですよね？…私は、母と似てるから。ダメですよ、母にも、私にも、橘さんにも、誰にもいいことが無い」

「……バレてる、のか、やっぱり…」



流石美代子の娘だな、敵わねぇよ

そう笑う橘さん

好きだったよ、橘さん

本当は

大好きでした

でも、私を見てないって気付いて

私と橘さんだけの世界に

ある人が踏み込んできて

橘さんへの気持ちは憧れに変わった



「及川、か？」

「……どうでしょう」



二度目の恋は、芽生えたばかり

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