煩悩六 ページ7
「悪ぃ、今日も行けなくなった」
それは一週間ほど前の、土方と約束していた日の朝のことだ。
珍しく土方から電話がかかって来たが、この数少ない電話口の話では約束の断りしか聞いた事がないので俺だ、と声を聞いただけで気持ちは落胆した。
「へーまあ仕事なら仕方無いな。んじゃ次いつ会える?」
「いや、次の非番もまだ分かんねーんだ。決まったら連絡する」
「そうか、分かった。仕事頑張れよ」
「ああ」
たったこれだけの短い通話。この短時間でテンションだだ下がりだ。だが仕事なら仕方ない。俺も真選組に身を捧げるその真っ直ぐな信念に惚れたのだから。
そんなことを考えながら、ガチャと受話器を置く。その音は静まった万事屋にやけに響いた。
「それでもまあ……寂しいな、なんて」
実の所、本音を言ってしまえばそうなのだ。それでもそれは自分の身勝手な我が儘。邪念を振り払うように首をふるふると振る。
気を紛らわせようと二度寝でもしようかと思ったが途端、玄関の扉がガラリと開く音がした。続いて聞こえて来たのは耳慣れた少年の声で。
「銀さーん!起きてますかー!」
「ハイハイ起きてますよー」
俺はまだ充分幸せじゃないか、と皮肉げに口の端を歪めた。
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作者名:シチ副長 | 作成日時:2018年1月4日 19時