煩悩十 ページ11
ドクドクと耳の裏と心臓が煩い。緊張しているのだ。
対面でソファに座っている。なんで別れ話なのにこんなに緊張しなければいけないのか。
いっそここから逃げだしてしまいたい。
だが早く言わなければいけない。
早く、こいつを縛っている硬い紐を、解かなければならない。
沈黙を終わらせようと意を決して口を開く。
「……終わりにしよう」
「……は、」
ほらコイツは優しいから。
「だから、もうこんな関係やめようぜって言ってんだ」
「あー……いやなんで」
「だから……!もう、お前に我慢しかさせないこんな馬鹿みたいなのはやめようぜって言ってんだッ!!」
「え」
顔を見て言いたいけどあの冷えた目が堪らなく怖くて顔をあげられない。
もう一旦溢れれば止まらない。声は聞こえない。鼻の奥がつんと痛い。
「いつもいつも何なんだよテメェは!!他人の事ばっか気にしやがってッ、もっと自分の事も気にしろよ!!ふざけんじゃねぇ!何であそこで止めた!何でそこで我慢した!何でいつもテメェは他人の事しか考えない!何でいつも本音を隠そうとする!何で別れたいと言わない!何で……テメェはそんなに優しいんだよッ!!俺のことなんか……っ」
別に好きでもないのに。
「ひじかっ…」
そんな科白を土方の口から聞いてしまい、呆気にとられた銀時は取り敢えず何か言わなければと思わず口を開く。
だが土方の言葉にそれに遮られる。もう止まらないのだ。
「もう沢山なんだ!!お前に我慢させるのは嫌だ!!お前に甘やかされるだけなのは嫌だ!!お前に優しくされるだけなのは嫌だ!!……俺はもう、
お前に与えられるだけの関係は嫌なんだ。
俺だってお前を甘やかしたい、
優しくしてあげたい、
与えてあげたいんだ。
「お前がっ、出来ないんだったら、俺がこんな遊びやめてやーーー
「ごめん」
それは暖かい、抱擁だった。
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作者名:シチ副長 | 作成日時:2018年1月4日 19時