教わる ページ9
ヒユリは私たちを木陰のテーブルに案内してくれた。
「ボクに勝ったシルシ、まず、コレをあげるよ。」
周りに飛んでいる黄緑の蝶を2つ捕まえて、それぞれ瓶に入れて、術式と共に渡してくれた。
「ボクが使った、ショクブツのチカラをもらう術だよ。」
「あ、ありがとう。」
瓶をしまうと、エリスが彼に話した。
「いろいろ聞かせてもらうぜ。」
「…わかってるよ。」
私もいろいろ聞きたいことあるしね。
「まずお前、人間じゃないだろ?何者だ?」
「…ボクたちはキミたちが逃がした蝶のケシン。強いココロの蝶だったのかもね。ニンゲンからは“守り人”なんてよばれたりすることもある。」
ボクたち?
この先にも守り人がいるってことかしら。
「キミたちにも聞いていい?採集家はニンゲンからは嫌われてるって聞いたんだけどホントウ?」
…。
「…本当よ。己の心を簡単に覗き見れられるのと一緒。私も嫌よ。」
「じゃあナゼ?どうしてキミたちは蝶の楽園に入ってまで採集家を続けようとするの?」
それは…。
「言わなくても分かってるだろ、お前なら。…アプリコットだよ。」
「え、アプリコット…?」
ヒユリはそんなまさか、という顔をした。
「どうしてアプリコットの蝶のコトがニンゲンに伝わってるの!?だってアレは…!」
何…?
「…俺たちは資料に書かれたことを見て知った。たぶん、人間が書いた資料なんだろうけど。」
「じゃあ、キミたちイガイにもアプリコットのソンザイを知ってるニンゲンがいるかもしれないってこと?」
首を縦に振る。
「そんな…。」
「なぜお前がそんなに取り乱す?」
ヒユリが躊躇した気がしたけど、気のせいね。
「アプリコットはね、カミサマのココロなの。ココのイチバン奥にいる、カミサマの、ココロ。」
神様。
どうりで、人間からは見つからないわけね。
「それが知られたら楽園はニンゲンで埋め尽くされてしまう。悪いココロを持った、欲深きニンゲンたちの…。」
エリスは笑う。
「安心しろよ、それは初耳だ。ま、俺たちがここに来たのは間違いじゃなかったってことだ。お前の他にも守り人がいるんだろ?あと何人だ。」
「あと、2人。」
意外に少ないのね。
「あっそ、なら余裕だろ。行こうぜA。」
立ち上がると、エリスはすぐに歩き出した。
ヒユリのことなど気にせずに。
…嫌いなのかしら。
私も後ろに着いていくと、ヒユリが何か喋ったように聞こえたけど、よく分からなかった。
「ツギは頼んだよ……レイダーテ。」
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作者名:円香 | 作成日時:2018年8月7日 16時