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おにぎりをひとくち食べると、ほどよい塩気と海苔の香りが良い
久々に食べる、ちゃんとした食事だった
「美味しい！」
棘もコクリと頷き、おにぎりを頬張る
おかかは半分に割り分けて食べた
なくなったおにぎりの入っていた皿を見つめて司はあることを思いつく
「とげくんの呪言って、どんな言葉でも呪いになっちゃうの？」
司の質問に棘は目を逸らした
素振りで聞いてはいけなかったのかと後悔が過る
棘はノートを手に持ち、ペンを動かす
「…なるほど」
そこに書かれていたのは、呪言の例だった
反映されるものには罰点、されないものには丸が書いてある
動くな、潰れろなどは前者、おにぎりの具などは後者になるということ
「じゃあ、僕とおにぎりの具で話そうよ！」
「そうだな…しゃけはいいよ、おかかはいやだとか！」
棘と話しをしたい、その一心だった
今考えれば、なんて馬鹿な提案だろうと笑えてしまう
司のその言葉を聞いて、棘は驚いたような顔をする
「せっかく話すなら、とげくんの声で聞きたいもん」
本人にとっては何気ない言葉
だけどその時の棘にとっては、何よりも望んでいた言葉
「…しゃけ」
「ん？」
「しゃけぇ…っ」
ポロポロと大粒の涙が棘の頬を伝う
泣かせてしまったことに慌てる司
どうしたら泣き止んでくれるかわからず、記憶に残る母を思い出す
「大丈夫、大丈夫だよっ」
ぎゅっと棘の身体を抱きしめる
人の温もりに触れるなんて、いつぶりだろう
鼻の奥がツンっとしてきた
着ていた着物が濡れるがそんなの気にならない
棘の涙が止まるのなら、なんだっていいんだ
「司様ー！？」
廊下の方から人の声がする
司を呼ぶ声
聞こえないフリをしようとしたけど
棘が気づいてしまい、顔を上げて外を見る
泣いたせいで腫れてしまった目元を撫でて、司は手を握った
「とげくん、また話しに来ていい？」
「…っ！！」
「今度は僕がおにぎり持ってくるよ」
そう言うと棘は微笑んで手を握り返してくれた
司は酷く寂しかった
味方のいない広すぎる屋敷で、ずっと独り
血反吐を吐く様な稽古と安らぎのない生活
あの時棘に出会ってなければ、司は今とは別人になっていただろう
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新(プロフ) - 雪見だいふくさん» 雪見だいふく様コメントありがとうございます。作品へ好感を持ってくださり私自身もとても嬉しいです。実は先日、貴方様の作品を拝見しておりました。まだ六本木のくだりまでしか読めていなので、この後ゆっくり読みます！雪見だいふく様の作品の更新も心待ちにしてます (2020年12月4日 21時) (
レス) id: 683216893f (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - 初めまして、いつも楽しく読ませていただいております。とても素敵で引き込まれる作品でとても大好きです！お身体に気をつけて新様のペースで更新頑張ってください (2020年12月4日 14時) (レス) id: 3dc274e14b (このIDを非表示/違反報告)
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