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「案ずるな!伊黒!甘露寺!後は俺に任せろ!!」
いつの間に座敷の外で出ていたのか、煉獄さんが立っていた。
意気揚々と入ってくる彼の頭の上には、見覚えの無い──眼鏡が。
それを目にした瞬間。ボクと胡蝶様は同時に目眩に襲われた。
『(まさか……いや、そんな…いくら実直な煉獄さんでもそれはないですよね……)』
また嫌な予感が頭をよぎる。冷や汗も。
煉獄さんは冨岡様を目に映すとフラフラと手をさ迷わせながら真っ直ぐ彼の元へ足を進めた。
「冨岡よ!俺の眼鏡を知らないか?さっきから探しているんだが、どこにも見当たらなくてな!」
貴方、普段、眼鏡なんてしないでしょー!?
最早 開いた口がふさがらない。
一体どこでそんな芸を見た?千寿郎くんは知っているのか?知っているのかぁ!?
あまりの奇行に頭の中が大混乱。
明日、知恵熱で寝込みそうな勢いである。
「………頭の上にだ」
たっぷりの間を空けて素直に答えた冨岡様でさえ唖然としており、無意識にポロリと
「煉獄は目が悪くなっただけでなく、頭まで悪くなったのか」
言ってはいけないことを口走ってしまった。
これにはさすがの煉獄も
「むぅ」とうなり
「無理だ!!
何人なりとも冨岡を笑わすことはできん!」
匙を投げた。
大丈夫です。煉獄さん。誰も笑ってません。
「そもそも、眼鏡なんてかけてらっしゃったんですか?」
「いや!俺は三十間(約55m)先まではっきり見えるぞ。これは今、仕込んできた!」
いやいや、そんな自信満々に言われても説得力皆無ですからね。
しかも、声も抑える気ありませんね。冨岡様にまで丸聞こえですよ。
また思考停止で固まってますよ。もう収拾がつきません!
唯一の良心、胡蝶様の方を見ると何やら思いついたのか不死川様に耳打ちをしている。
何故、不死川様なのか。
果たして不死川様は冨岡様を笑わせよう作戦に快く動いてくれるのか。不安は尽きない。
むしろ増している。
胸騒ぎどころか動悸がする。
え、ボクここで死ぬの?
「ふわぁー」
うん。時透くんは自由だね。可愛いよ頭撫でたい(現実逃避)。
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