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「こちょこちょこちょこちょー!!」
「……」
甘露寺様が背後から冨岡様の脇腹をくすぐっている。必死だ。かなり必死だ。

「降参かあ?降参かあ?降参しないと、もっとくすぐっちゃうぞー?」
やりたいことは分かる。
ある程度の人ならば、脇腹をくすぐられると耐えかねて笑ってしまう。
年端もいかない幼子なら破顔ものだ。
炭治郎が弟たちにしていたのを見た事がある。
手っ取り早くて良い案だ。

だがしかし、相手が悪かった。

「……」
無言の冨岡様は何が起こっているのか分からず固まっていた。
必死な甘露寺様は気づいていない。

「こちょこちょー!」
「……」

「こちょこちょこちょー!!」
「……」

冨岡様の顔が無情どころか青ざめてきている気がする。
これは早急に止めねば!

ボクは慌てて間に入り、冨岡様から甘露寺様を引き剥がした。
冨岡様の顔色に気づいた甘露寺様は、羞恥にみるみる内に顔を赤くさせその場に座り込んだ。
「ご、ごめんなさい」
しおしおとうずくまる。

「……ホント……ごめんなさい……私………消えちゃいたい…」
貴女は悪くありません。勇敢でしたよ。
そんな意味を込めて労いの肩ポンをした。
目元を潤ませ見上げてくる甘露寺様はそんじょそこらの甘味より甘い香りがする。
思わず苦笑いが零れた。

『甘露寺さ「冨岡!」ぬわっ!』
ボクを蹴飛ばして二人の間に入ってきた伊黒様は、甘露寺様を背に庇い冨岡様を睨みつけていた。
ボク?ちゃんと受身は取りましたよ。

「お前には人の心がないのか……
甘露寺の健気な頑張りを踏みにじったお前を俺は許さない。未来永劫にな」
怨念のこもった両の目の伊黒様。前半は同意しますけど後半は明らか私念入ってますよね?
なんて口が裂けても言えないこと(三回目)を心に抱えながら彼を見上げていると、後ろから裾を引かれる。
頭だけ振り返ると、時透くんの無垢な瞳とかち合った。
大丈夫かと聞かれ大丈夫だと答える。
なんだかんだで優しい子です。
炭治郎の姿と重なり頭を撫でると目元が緩んだ気がした。ホワホワする。

すぐ背後で、刀を抜かんとするほど一触即発な空気なのには触れたくない。

その空気を破るように、無駄に大きな音を立てて襖が開いた。



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参→←壱



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作者名:タートル | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年12月11日 20時

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