走馬灯のような ページ11
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side 甚爾
あれは気まぐれだった。
気が合い 交わり捨てた女。
再会した時、女はガキを連れていやがった。
俺の子だとアイツは嬉しそうに笑う。
マジか。
ガキはアイツにも俺にも似ていた。
ガキは、禪院の相伝術式を継いでいた。
俺には与えられなかった それ。
なんか、複雑だな。
──A──
ガキの名前。
妙にませていて我儘も言わない。
だが、俺が“ 仕事 ”から帰ってくるといつもじっと見てくる。
なんだと聞いてもなんでもないと返された。
ある意味 扱いにくいガキだ。
ガキは視えている。
呪力もそれなりにあるのだろうな。
気まぐれで術式について教える。
ガキは直ぐに玉犬を顕現してみせやがった。
これが、
羨ましくはない。
ただ、コイツの先を案じたのだろうと
今になって分かったよ。
不思議と、不快は感じなかった。
もう1人、俺たちの間にガキが産まれた。
産まれた直後に2人は襲われ、玉犬のおかげで反転術式のおかげで………Aのおかげで
アイツは助かった。
「アイツを助けてくれて ありがとな」
顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
声を上げて泣いていた。
戸惑いつつも抱き寄せると思いっきり首元に抱きついてくる。
耳元でうるせぇ。
ガキはあれ以来 積極的に教えを乞うようになる。
まあ主に体術だがな。
術式系統はからっきしだ。
何せ俺には呪力が無ぇ。
ガキは俺を見つけるのが上手かった。
何処にいても見つかる。
オマエは俺の母親かよ。
俺は五条のガキに負けた。
不思議と悔しさは無い。
捨てたはずの
「最期に、言い残すことはあるか?」
「……ねぇよ」
言葉とは裏腹に頭をよぎる息子の顔。
視線を落とすと目を閉じている娘。
勝手に口が動いていた。
「2、3年もしたら俺の
好きにしろ」
なんでこんなことを口走ったんだろうな。
はっきり言って自分でも分からねぇ。
けど、
………考えるのも面倒くせぇ。
腕の中の娘は温くかった。
子ども体温。
言ったらしかめっ面するだろうな。
自然と上がる口角。
眠い。
俺は、その眠気に逆らうことなく目を閉じる。
クソみたいな人生だった。
けど今は………
──甚爾くん、おかえり──
「……悪くねぇ」
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←今、貴方に会いたくはなかった ※少し血の表現あり
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